Day1.05

「馬鹿らしい」

ヒヤリとした音が響いた。
その音を発した本人は心底面倒臭そうにタメ息をつき、みんなは慌てて鎮めようとするが態度は変わらない。そんなソルトをカベルネは睨み付けた。

「馬鹿らしいってどういうことだヌー!」

「そのままに決まってんだろ。過ぎ去ったことでウジウジ言いやがって。悲劇のヒーローぶってんじゃねぇよ」

「ソルトそれは言い「お前もだ」…!」

止めようとするシュガーに向かい、ソルトは苛々を吐き捨てる。

「ナイトビュッフェの時から辛気臭ぇ顔しやがって。迷惑かけたと思うんなら周りに気ィ使わせんじゃねぇよ」

図星を指されたシュガーは言い返せずに口をつぐんだ。
えも言われぬ沈黙が辺りを漂う。
気まずい空気の中、口を開いたのはシュガーだった。

「そりゃソルトの言ってることは正しいよ。けどやっぱり悩むじゃん。感情があるもん。嫌な事があってもすぐに立ち直れる人と立ち直れない人がいるし、立ち直るきっかけが必要な人だっている。周りから見てると確かに面倒だと思う。けど、自分で乗り越えるために悩むんだよ。…前に進みたいから悩むんだよ」

「…可哀想な自分に酔いしれて前進しねぇ奴も居るだろ」

「私たちは大丈夫。この旅は皆にとって掛替えのないものになるはずだから」

そのシュガーの言葉には沢山の意味が込められていた。
ソルトはその違和感に眉を寄せたが、もう一度大きなため息をつくと、

「精々悲劇の主人公になるなよ」

と教室から出て行った。



「ソルトがごめん」

残されたシュガーはカベルネに謝る。

「でも誤解しないでほしい。悪気が有って言った訳じゃなくて、」
「そんなのわかんないヌー」

「ソルトはね、あれでもみんなのこと、気に入ってるんだよ。さっき言ってたでしょ?『 可哀想な自分に酔いしれて前進しない人もいる 』って」

カベルネはむっつりとしつつ小さく頷いた。

「カベルネには、…ううん、皆にはそうなってほしくないんだよ」

「………よくわかんないヌー…」



「素直じゃないけど、心配してるだけなの」

なんだかんだ、優しいからね。
そう言って微笑むシュガーはどこか寂しそうだった。









CreationDate:2007.04.22
ModificationDate:2015.04.25




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