Boy's Side -Day2- 06

この宿屋は一部屋6人用のようでなかなか広い。二人は別々のベッドに腰掛けた。ソルトはカシスのベッドから一番離れたのを陣取っているが、理由は言わなくても解るだろう。
カシスが口を開く。

「…15年前、大戦争が有った。…一般には知らされてないけどな」

「…戦争」

「そりゃ酷いモンだったらしいぜ。何万人と連なる死者の名前…。…情報によると一人の魔法使いが駆け回って治めたらしいが、どうやら校長のことらしいな」

「…何でそれが今更話題にあがるんだよ」

「まあ待て、順にいこう。3年前も戦争があった。…聞き覚えないか?この年数に」

「…ガナッシュの姉貴がおかしくなったとかいう年だったな」





「王立軍が交戦中だ!!ヌガーリバーがカシューの橋からガルバンゾまで立ち入りを制限されてるらしい!!」

慌しく扉を開けてカシスが教室に飛び込む。

「カシューからガルバンゾ!?オイラの兄貴が配属されてる場所ヌ〜!」

「交戦中…?コヴォマカは平和な国だよ。戦争なんてありえない」

「俺だって伊達に裏社会に足を突っ込んでるわけじゃねぇ。奴らの情報は正確だ。王立軍はとんでもねぇ敵と戦ってる。…戦死者リストに剣聖や大魔道の名前がズラッと並んでるんだ。ただ事じゃねぇ!」

シードルは信じず、手元のスケッチブックに目を戻した。

「演習の事故を誤魔化す為のでっち上げじゃないの?よくあることでしょ?戦争を口実にして兵士を集めたいのさ」

「事故…!?よくあること…!?もしその全てが今回みてぇな戦争だったとしたらどうする…?」

沈黙を守っていたガナッシュが拳を握り締める。

「…ちくしょう!何で止められなかったんだ!!」
「!!!!行っちゃ駄目!!近づいちゃ駄目!!」

オリーブの止める言葉も聞かず、ガナッシュは焦りを隠さぬ様子で部屋を出て行った。

「…止める?あいつ俺の話をちゃんと聞いてないな?誰が止められるもんか!」










CreationDate:2010.01.04
ModificationDate:2015.05.11




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