Girl's Side -Day2- 08 宿屋の空気は何処と無く静かで暗い。妙な不気味さに不安を感じているのか、おどおどしているピスタチオはシュガーの服を掴みながら宿屋の中を見渡した。 「…あれは、パペットだっぴか?」 レジの横においてあるパペットらしき人形に手を伸ばすピスタチオに、カウンターの中にいた店主のティラミスだろうパペットは体を乗り出して激しく怒鳴る。 「触るな!!!」 「!!なっ、なんだっぴ!?」 「…それは俺の弟だ!」 「弟〜?」 「200年前に崖から落ちて動かなくなった。壊れないように大切に大切に守ってきたんだ!勝手なマネはするな!」 形在るものはいつか喪われる。それはどんなものであってもだ。キルシュの言う例えも強ち間違ってはなさそうだとシュガーは弟に執着心を示すティラミスを見ながら思った。 「一泊5ブラーだ!さっさと部屋に入りな!」 周りが眠りに付いた静かな中でシュガーは寝付けず布団の中でぼんやりと考えていた。 こちらの世界に戻ってくる前にしたことがある“Magical Vacation”の内容は殆ど覚えていない。ガナッシュの過去やオリーブ、キャンディのことなど攻略に直接関係しないことは覚えている。ただ、直接的な出来事は。攫われたキルシュがどこにいるのか解らなかったのがいい例だ。この状態で皆を救うことはできるのだろうか。 ……ああもう、このままじゃ悪い方にばかり考えてしまいそうだ。 シュガーは気分転換をするために皆を起こさないよう静かに部屋を出て、宿屋の入り口にティラミスが隠れているのを見て立ち止まった。嫌な予感が胸を過り、音を立てずに物陰に潜んで様子を伺う。 一人のパペットが外をうろうろしながら何かを待っていた。誰かに呼び出されたのだろうか。ティラミスはじっと見ていたかと思うとそっと近寄っていく。周りを見て、誰もいないことを確認したティラミスはそのパペットを───── 「……………っ!!」 シュガーは驚き、物音を立ててしまった。 「誰だ!?」 ティラミスは慎重にシュガーの方へ近付いてくる。見つかったとシュガーが覚悟を決めた時、後ろから口を押さえられてそのまま引っ張られた。 「っ!?」「静かに…」 音がした辺りを探すが特に何も見つからない。 「気のせいか…」 ティラミスは自分が殺したパペットを一瞥し、部屋に戻っていった。 CreationDate:2010.01.04 ModificationDate:2015.05.08 [ 8/9 ] [ 43/79 ] [Put a Bookmark] ← 戻る |