Day2.11

「…ソルトさぁ、私がシュガーに嫉妬してるのわかってて、よくここで名前出せるよね」

「俺がお前に気を使う必要性がない」

「あはっ、ソルトらしい……、」

ここまで開けっ広げに言われると逆に清々しい。キャンディはいつの間にか悔しさが消えているのに気付き、それによって押さえつけられていた涙が滲み出るのを感じた。

「…どうせ、やることないんでしょ」

「ああ?」

「可愛い女の子が泣いてるんだから、肩くらい貸しなさいよ」

「はあ?なんで俺が!面倒臭ぇ!」

嫌がるソルトの服を無理やり掴み、頭を押し付ける。ソルトは鬱陶しそうにため息をついたが、諦めたのかされるがままになっていた。キャンディはどこか悲しさの中に嬉しさを感じながら涙を流した。





「…ありがと」

「マジめんどくせぇ」

悪態をつくソルトにキャンディは笑う。

「優しいじゃない、ソルト」

「お前が無理やり掴んだからだろ!」


…ううん。優しいよ。
だって、振りほどいたってよかった。
振りほどけたはずだった。
けれどそうせずにいてくれた。

……優しいよ。


キャンディはそう言ってもきっと認めないだろうと、口に出さずに話を変えた。

「…ソルトはさ、悩むのってどう思うの?」

「…正直ウゼェ。…でも羨ましい」

「羨ましい…?」

「悩むってことは選択肢があるってことだろ。最初から一つしか用意されてねぇ答えに悩めねぇよ。…それがどんなに選択したくないものでもな」

だから悩めるやつが羨ましくて腹立ってくる。とソルトは呟いた。
キャンディは目を丸くしてそんなソルトを見つめる。

「…ソルトのそういう話、初めて聞いた」

「…別に言うことじゃねぇだろ」

「…それは、シュガーのこと?」

「……」

無言は肯定だ。

「もういいだろ。戻るぜ」

ソルトはそう言うと早足で広場の出口に向かう。らしくない自分に照れているのかもしれない。
キャンディはソルトの意外なところが見えたなぁと頬を緩めると、立ち去る背中に声をかけた。


「ありがとう!」









CreationDate:2008.08.24
ModificationDate:2015.05.03




[ 11/18 ]
[ 28/79 ]
[Put a Bookmark]

 

 戻る
Top 



第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -