Day2.08

「怖い?」


「…え?」

唐突に投げ掛けられた質問に、オリーブは言葉を失った。

「私の考えてることがわからなくて、怖い?」

「…そんなこと、」

ないと口には出来なかった。初めてシュガーと会ったときに、読めなくて不信感を持ってしまったことを覚えている。その後に巫女だと聞いて、巫女だから読めないのだと納得したが、それでも異物感で距離を開けてしまっていた。けれどそれを認めてしまうと自分がこの能力に頼っていることになる。好きになれない、むしろ恨んでいるこの能力に頼ってしまっていることになる。

「…ちが、う…ちがうの」

俯いてしまったオリーブの頭をぽんと撫でる。オリーブは恐る恐るシュガーを見上げたが、

「え」

シュガーは微笑んでいた。

「ごめんね、意地悪だったね。…でも、悪いことじゃないよ」

「…え、」

「悪いことじゃない。オリーブは認められないのかもしれないけど、自分の持ってるものを使うのはいいことだよ」

優しく諭されて、オリーブはかっと頭に血が上った。

「そんなの他人事だから言えるのよ!何がわかるの!?聞きたくないものも聴こえて!ずっと怖いと思ってるのに!」

「でもオリーブは動物には使っているでしょう?何が違うの?」

そうだ、シュガーのことだけじゃない。今までだって自分が使いたいときに利用していたのだ。

「…、酷いよ…」

そんなこと知りたくなかった。気付きたくなかった。

「…貴女もこの旅で答えが出るのかな」

じわりと視界が歪むのがわかる。シュガーが何かを言ったように思ったが、声は入って来なかった。周りにいた鳥たちが、心配そうに近寄ってくる。…心配、そうに。

「…酷いよ…」


「知っているからどうしたらいいのかわからない。だからそれなら知らない方がよかった。けど、わからないことが怖い」


自分の心情を言葉で明確に示されることで、認めざるを得なくなり、涙が零れる。


「…私も、一緒だよ」


悲しげで苦しみを含んだその言葉は、オリーブの耳に綺麗に響いた。
オリーブがその言葉の意味を咀嚼して、驚いて顔をあげた時には、シュガーの姿は無くなっていた。









CreationDate:2008.08.23
ModificationDate:2015.05.02




[ 8/18 ]
[ 25/79 ]
[Put a Bookmark]

 

 戻る
Top 



「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -