Episode4.12

「止めてえええええ!!」
「伏せろ!!!」

シュガーが悲鳴をあげると同時に叫んだソルトの大声で反射的に身を伏せる。
一瞬にして臭気が辺りに広がった。

「毒だ!体勢低くして、息はあんまり吸うなよ!」

シュガーを縛っていた荊は毒によって溶かされ、男達は毒気にやられて沈んでいく。

「なん、だと…」

「ぐ、」

「ぐあ…っ」


「え!?何!?」

「魔力の暴走だ」

毒はシュガーを中心に渦を巻くように周りを侵食していく。
暴走した魔法は自身をも傷付け始めた。
シュガーが毒に当てられたのか、服の首元を握りながら倒れる。魔法はそれでも止まない。

「畜生…っ」
ソルトは悔しげに言い捨てた。

闇?光?特殊魔法が使えるからなんだというのか。こんな時に何もできないなら役立たずじゃないか。


 助けたい?


何処からか聞こえる音にソルトは吠える。

「当たり前だろ!」


 ならあげる。


何、を?

いきなり怒鳴ったことに戸惑いながら様子を窺う三人に全く気付かないソルトは、身体の中から何かが沸き立つのを感じた。

「…プレーステール」

ソルトの口から出た風魔法は、辺りの毒を蹴散らすだけではなく、いまだシュガーから放たれる毒魔法を抑え込んだ。
何故自分が使えたのかは疑問が残るが、そんな事よりも急いでシュガーの元に走る。

「…なさい、ごめんなさい、」

倒れ臥しながらも同じ言葉を繰り返し呟くシュガーに、ソルトは自分の心臓が激しく動くのに気付いた。

もしかして、……まだ、まだ早い。

ポケットからケースを出し、その中から液体の入った小瓶を取る。それを自分の口に含むと、口付けをして無理矢理飲みこませた。

「忘れろ」

「、…ソルト…?」

「そのまま全部。お前のせいじゃない」

「…ソルト、…何を」

「寝て起きたら元通りだから」

そう言ってソルトは音魔法をかけてシュガーを眠りに落とす。


今思い出すのはこいつのためにならない。


違うだろ?と問いかけるものに気付かないふりをして。









CreationDate:2005.08.18
ModificationDate:2015.04.18




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