Episode4.11 ソルト側は苦戦していた。四人の男達との魔法能力の差は殆どなく、寧ろこちらの方が力量は上だろう。ただ圧倒的に実践経験が足りない。 それに加え範囲の広い雷魔法は、一対一ではなく一対二、または一対三となりソルト達を襲う。 だが苦戦しているとは言えど、圧しているのはこちらだった。 「何をしてるんだ…!」 リーダーの男が苛々しながら吐き捨て、目をカシスに向ける。 中心になっているのはソルトではあるが、支柱となっているのは実践経験の豊富なカシスだ。 それを男は察していた。 カシスの属性は刃で、男はカシスにとって弱点と言える。 こいつさえ潰してしまえば、 不穏な予感にカシスは大きく後ろに飛び退いた。目の前で黒い薔薇が咲く。 「カシス!」 「大丈夫だ!…前を見ろ!」 急いで闇魔法で防いだが、ガナッシュにも美の魔法が飛んできた。 一対一だとは言われていない戦いに卑怯などの言葉はないのだが、翻弄するように向かってくる荊にペースを崩されたソルト達は防戦一方になる。 「…、」 シュガーの呻く声に男は横を向いた。 「目が覚めたか」 ぼやけた視界がクリアになっていくのと同時に、目の前で起こっている事態を把握する。 「…!ソルト!カシス!ガナッシュ!シードル!」 戦いの中でソルトと目が合った。 また私はソルトを、…? …また?…またって、何? 「どうだ、お前のせいで傷付いている友達を見るのは」 「…止めて、お願い」 「お前が言うことを聞くなら助けてやる」 シュガーの脳裏に雪景色が過る。 違う、あれは幻覚だったから。 知らない。違う。私じゃない。 だってお母さんとお父さんは…、 …どうして死んだんだっけ。 白い空間に赤が飛ぶ。 違う、…違う! 「 ま た 犠 牲 者 を 増 や す の か ? 」 倒れている両親、自分を引っ張るソルト、知らない男性、追いかけてくる誰か。 全てが目の前の光景に合わさった。 「…めて…止めてえええええ!!!!」 CreationDate:2005.08.18 ModificationDate:2015.04.16 [ 11/19 ] [ 51/59 ] [Put a Bookmark] ← 戻る |