Episode3.02

「ここからここまで!?ひ、広いヌ〜…」

部屋の前に集まるクラスメートに、ちょっと待っててね、とドアノブを回す。

「えっ!?鍵かけてないの!?」

「不用心ですの!」

大丈夫だよーと言うシュガーの横を、ピスタチオは許可なく入り込み、さっさと靴を脱いで廊下に上がった。

「あ」

シュガーとシードル、ガナッシュ、カシスの声が重なる。

『侵入者、発見。直チニ地下牢へ送リマス』

「ぴぎゃ!?」

音声と同時に廊下に穴が開き、ピスタチオが落ちるところで、玄関にいたカシスが首根っこを掴んで助けた。

「だからちょっと待っててねっていったのに…」

「人の話は最後まで聞け」

呆れ顔でいうシュガーとソルトに激昂したピスタチオはカシスの腕を払い吼える。

「そんなん走って行けばどうにかなるっぴ!!………ぴーーーーー!!」

廊下を走るピスタチオの後ろは穴だらけで。

あの時のピスタチオなら世界新記録も狙えたぜ、と後日某赤髪の少年は証言した。


廊下を越えたら終わりだ!
そう思って涙を流しながらリビングにたどりついたピスタチオは、天井から落ちてくる檻に反射的に飛び退いた。


──人間、必死な時は力が出るってほんとだっぴね。

犬である。


それからも檻は落ち続け、避けていたピスタチオの着地面に、次なる刺客、針山が現れる。

「ヒィィィィィィ!!!」
ここにいたらコロされる!!

そう思ったピスタチオは窓からの脱出を試みた、が、失敗した。

窓を開けた瞬間にボクシングにかかせないグローブがピスタチオの顔面にめり込む。

「ぎゃっ!」

ピスタチオは窓枠から床に落ちるまでの間、走馬灯のように流れる記憶に死を覚悟した。

ガチャンと音を立てて落ちてきた檻に捕まるピスタチオ。

「オイラ運がいいっぴ!!剣山じゃなかったっぴ!」

そう言いながら格子を掴むと、檻には電気が流れており、痛いぐらいの電流がピスタチオを襲った。

「グハァ!!」

『抵抗スル気力モ無クナッタ様ナノデ地下牢ニ送リマス』


…もうどうにでもしてくれ。


ピスタチオは泣いた。









CreationDate:2005.07.3
ModificationDate:2015.04.09




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