Episode2.08

「やっと着いた!あ、もうみんな着いてたんだ」

「すげぇな…この笹」

「うん。金に光ってる…」




「幻覚、何見たの?」

微妙な沈黙の中、シードルが尋ねる。ガナッシュはシードルの明け透けな物言いに慌てるが、やはり気になっていたのかそのまま黙ってシュガーとカシスの様子を伺った。

「親父」
「私も両親と、後なんか知らない人」

「知らない人?」

「うん。…多分、見たことないと思うんだけど」
「所詮幻覚だからな。…思ったより時間食ったし、さっさと帰るぞ」

考えるシュガーの言葉を遮って、ソルトは金の粉が入った瓶を鞄に入れる。

「笹のまま持って帰らないの?」

「ここまでそこそこ知識のあるやつなら余裕で来れる。それに俺たちの方は人の手が加えられた道だった。なのにここに存在して、尚且つ笹本体を持ち帰った者はいないってことは、持ち帰ろうとすると何かが起きるってことだ」

「だから風で舞う粉を瓶に容れてたのか」

「ああ。持ち帰るのが駄目なのか、触れるのが駄目なのかがわからねぇからな」




「…帰る前にせっかくなんだし願い事しようよ!叶うんでしょ?」

そうしてそれぞれが思い思いに念じた途端、笹が強く光る。
眩しい光に目を瞑り、光が無くなった事を感じて目を開くと、五人は入ったはずの洞窟の前にいた。

「「…!?」」

…さっきまでのは、夢か?

そう思うがソルトが鞄から出した金の粉が詰まっている瓶でその考えは否定される。

多分笹自体が魔力を持つ植物で、今まで取ろうとしたものはこういう風に追い返されていたのだろう。
何故触ってもいないのにワープさせられてしまったのかは、そういうこともあるだろうと納得することにした。





「みんな何お願いしたの?」

帰り道、シードルが聞く。

「お前は?」

カシスが聞き返す。

「内緒。信じてないけど、願い事は誰かに教えたら効かなくなるって言うしね」

「なら誰も言わないだろ」





みんなの願いは同じようなものだった。

カシスも、シードルも、ガナッシュも、シュガーも。そしてなんだかんだ言いながらソルトだって、今が幸せだと感じている。


この日常が壊れることがない様に、と。









CreationDate:2005.07.18
ModificationDate:2015.04.07




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