Episode2.07.Side-L-

カシスが幻覚から開放された時、シュガーはしゃがみ込んで泣いていた。

「ごめ…っ…ごめんなさ…」

ポタポタと流れる涙に、光の無い瞳で何回も同じ言葉を繰り返すその様は見ていて苦しくなる光景だった。

「シュガー!」

名前を呼んでカシスは肩を揺する。ピクリと反応を示し、言葉を止めたシュガーにカシスはほっとして畳み掛けた。

「シュガー!しっかりしろ!」


それからすぐにシュガーは戻ってきた。





「幻覚って怖い…」

──俺の方が怖かったよ。

カシスはそう思いつつ手を出す。
手を取って立て。と言う意味なのだろう。

「なんかね、危ないって時にカシスの声が聞こえた」

手を取りながらシュガーが言う。

「へえ」

「あの声も幻覚かもしれないけど、助けられたのは事実だから、ありがとう」

「どういたしまして」

そう言って笑うカシスと、幻覚の中で見た男性が被る。

「カシス、」

「ん?どうした?」

「…ううん、なんでもない」

心に渦巻く罪悪感には気付かないふりをした。

(真実を受け入れるのは怖かった)





試練はあれだけのようで他には何もなかった。奥に光が見える。ゴールは間近だ。

「幻覚の事。ソルトには内緒ね」

そう言うとシュガーは走り、カシスもその後を追って走った。









CreationDate:2005.07.18
ModificationDate:2015.04.07




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