Episode2.01

「お花見しよう!」

ある休み時間、シュガーがソルトに提案した。

「はぁ?なんだいきなりめんどくせぇ」

ソルトが本から目を離さずに答える。ソルトの持っている本の表紙には、珍毒植物という物騒な四文字が並んでいた。

「花見って何見るの?」

「紫陽花でも柘榴でも何でもいいよ!最近雨ばっかで憂鬱だったから、気分転換したくなってさぁ。丁度明日休みだし、依頼もみんなのお陰で溜まってないし」

みんなのお陰というか、無理矢理なのだが。
ただ依頼料はしっかり分配されており、ある意味良いバイトといえば良いバイトなので文句を言うものはいない。

そんなシュガーとシードルの会話に割り込むように、全く関心を持っていなかったはずのソルトが顔を上げて発言した。

「花じゃねーけど笹でも取りに行くか」
「…」「…」

「何考えてんの?」
「今さっき面倒くさいって…」

訝しげな顔をする二人に、ソルトは見ていたページを見せる。

「…黄金の笹。すごく希少な植物。ここに記してある地図は、存在は分っているものの、罠のせいか、それとも別の要因なのかは判断できないが、笹を持ち帰ることができなかったために未だ存在している場所である」

「私達を道連れに?」
「ああ!」
ソルトは即答した。

えー…超面倒くさそう…危なそうだし。
乗り気ではない二人が話を変えようとするが、流石ソルト、シュガーの扱いは巧みだった。

「願い事叶うらしいぜ」
「行く。シードル、明日の朝10時集合ね」

「え、僕も!?」
「当たり前だろ」

御愁傷様。シュガーの後ろの席で寝たふりをしながらカシスが心の中で呟く。
ガタッとシュガーがこちらを振り向いたような気配がして、より深く机に俯せた。

「カシスも行きたいって!」
「言ってねぇよ!!」

飛び起きてツッコんだが、残念ながらカシスの言葉は黙殺されることとなった。
面倒事に巻き込まれた予感でため息を吐いて項垂れるカシスに一つの視線が届く。
そちらの方向では、ガナッシュが哀れむ目でカシスを見ていた。

「…シュガー、ガナッシュも行くって」

「なっ!?」
「オッケー」

旅は道連れ世は情け。
…思いやりどころか有無を言わせぬ選択があったことには触れない方が良さそうだ。









CreationDate:2005.07.07
ModificationDate:2015.04.07




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