01 ほら、起きて。 ゆらりとした意識の中、落ち着くような優しい声が聞こえた。 目を開けてまず写ったのは何もない白。 夢か。明晰夢ってやつ?初めてだわ。 キョロキョロと辺りを見ながら思う私の耳に、またさっきの声が響いた。 現実なのよ。時が来てしまったの。 いろいろ訊きたいことはあるが、その声の中に悲しみが混じってるように感じて口が開かなかった。そのまま黙って先を聞く。 貴女は本当はこの世界に存在するものではないの。 貴女にとってここは安全な場所だけど、帰らないといけなくなってしまった。 貴女はその世界の、巫女だから。 頭の中で風が流れた。そうだ。一気に蘇る情報に、くらくらと目が回る。 小さい頃に向こうで暮らした記憶。家族の記憶。今までの小さな記憶は植え付けられたものだったか。 そうして私の大事なもうひとりがいないことに一気に不安が巻き起こった。 向こうに帰れば会えるわよ。 「ほんとう、に?」 ええ。だから、帰りましょう。 けれど帰る前に、と声は続ける。 元の世界は魔法がある世界で、私には膨大魔力があり、それを制御しなければならず、その為にまず私は魔法を学ぶ学校に送られるということ。そして荷物(部屋のまま全部移動してくれるらしい。)やお金の換金(10円が1ブラーという単位になるらしい。)などの説明を終えると、上から水晶玉が降ってきた。 これを握って5秒目を瞑れば行けるわ 周りがだんだんと明るくなる。 ▽ 次に目を開けると自分の部屋だった。 ベッドから降りて電気を付けると、部屋の中央に水晶玉が用意されていた。 そうだ、行く前に一つやっておくことがある。 準備はできた。 さあ行こう。 水晶玉のヒヤリとした冷たさを感じながら目を瞑る。 1 2 3 4、 ごめんね、‥私の愛し子。 意識を失う瞬間またさっきの声が聴こえた気がした。 CreationDate:2004.05.12 ModificationDate:2015.03.16 [ 1/18 ] [ 1/59 ] [Put a Bookmark] ← 戻る |