Episode1.09

デザイン通りに側を仕上げ、それに填まるように宝石を加工する。針のようなものでブラックスター家の紋章を彫り、酸化して硬くなった事を確認すると、ソルトが溶解した液体が容れてあるスポイトを手に取り一気に流しこんだ。固まっていびつになった形を研磨して整える。

因みに役目が終わった他の四人はそれぞれ思い思いに過ごしていた。今までの依頼の資料を見ているものもいれば、本棚の本を読んでいたりするものも。

「で、きたー」

宝石を側に嵌め込み、不備がないか確認して、行程の全てが完了した時には日は沈んでいた。

小さめの木箱にFの刻印を付け緩衝材を入れ、お洒落なアクセサリーケースとなった箱に造り終えたネックレスとピアスを丁寧に仕舞う。

「まだ間に合うから、これ配送してもらってくるね」
シュガーはそう言うと部屋を出ていった。




十数分後、部屋に戻ってきたシュガーの手にはは高そうな箱があった。

「遅かったね…ってそれ、何?」

「いや、なんかずっと待ってたらしくって」

「え!?依頼者が!?」

「うん。事務室に行ったらいたよ。めちゃくちゃ喜んでた。お金は先払いで貰ってたんだけど、どうしても貰ってくれって言われて」

そう言いながら開けた箱には様々な宝石の結晶が入っていた。男いわく、ブラックスター家の持つ鉱山で見付かる宝石の結晶だという。
欲しいのある?と聞くシュガーに首を横に振る三人。ソルトは読んでいる本から目を離さずに、いらね。と一言。みんなの反応を見たシュガーは、その宝石の入った高価な箱を無造作に置いた。

「シードル、カシス、ガナッシュ、本当にありがとう」

「気にしないで」
「なかなかない経験で面白かったしな」
「ああ。また何かあったら言ってくれ」

帰っていく三人は知らない。
使えると思ったソルトに無理矢理手伝わさせられるはめになり、絵やデザインの依頼はシードルに任され、装飾を彫るような依頼はカシスに任されるようになることを。ガナッシュに至ってはFの店の窓口となり、書類の整理に依頼や金額の交渉を一任され、後々は他の四人に聞かずとも依頼書を見るだけで支払い額が判るようになるという、ガナッシュにとってはあまり喜べない成長を遂げることも。

にこやかに笑う三人には想像もできないことだった。









CreationDate:2005.08.02
ModificationDate:2015.04.01




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