Episode1.08

「シードルとカシスはネックレスとピアスのデザインをお願いします。この書類に彼女の情報とか結婚指輪のデザインとか書いてあるから参考にして」

「はーい」「OK」

「ガナッシュは俺と結晶の溶解な」

「溶解…?…わかった」

ムーンライトスターは空気に触れていないところ(つまり中身)が光り、触れたところ(外側)は黒く硬化する性質がある。
結晶に家紋を彫り、酸化して硬くなった部分に液体状のムーンライトスターを流すことによって、その部分が浮かび上がるように光るだろう。というシュガーの考えを正確に読み取ったソルトは、いくつかある結晶の中の小さい欠片を手に取ると、ガナッシュを連れて部屋の角にある机に移動した。

シュガーは結晶を宝石にするために割ったり削ったりしている。この結晶は、魔力が強く悪意のない者にしか傷を付けられないものであるが、ブラックスター家や希少価値ある宝石に特に興味を持っていないシュガーやソルトには関係ない。
男はFの正体など知りもしないが、Fならば作れると思った勘は正確だった。


「このデザインだとちょっと派手過ぎないか?高価さが出ちまう」

「結婚指輪の装飾がこれだから、こっちの方が良いかな」


「これは酸化すると失敗する。闇魔法なら真空状態にできるから、お前は俺の手元に闇魔法使っといてくれ。俺は溶解に集中する」

「そういうことか。わかった」


「これいいんじゃない?」

「ああ。これに対応するピアスとなると…」


「大丈夫か?闇魔法で気力吸われるだろ」

「俺も一応闇属性持ちだからな。問題ない」





「シュガー!こんな感じでどう?」

「わっ!すごい!いいね、これ!」

「けどこれだとピアスの石が小さめだから彫りづらいかな」

「大丈夫!私米粒に字書けるから!」

「すげぇな」

「部屋が広くなってるのってもしかして」

「私だよ!」

「…あの廊下の穴は」

「セキュリティはしっかりとね!」

イイ笑顔で言い切るシュガーに、二人は何も言えなかった。やはりソルトの親族である。



「もう昼過ぎだし、なんか軽いメシでも作ろうか?」

「助かる!ありがとう。食器棚の一番上の左端にあるボタンを押せば、地下に続く階段が出るから。食材と器具はそこにあるよ」

「…おーけー」

下手に口を突っ込まないことにしたカシスは、シードルをつれて台所に向かった。









CreationDate:2005.07.29
ModificationDate:2015.04.01




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