Episode1.05

「何があったのさ」

「説明すると長くなるんだけどね」

そう言いながらシュガーは散らばっている紙の一枚を拾う。それは例のチラシだった。

「これ私とソルト。「俺は無理矢理させられてるだけだけど」最近評判になってきたようで依頼も多くなってきたんだよね。「無視かよ」ソルトうるさい」

「…」「…」「…」

「1ヶ月以内に作るのが契約だから、昨日休みだったし一日中作って送ってたわけですよ。最後の一個を作り終えて配送を頼んで、さて部屋に戻ろうか、と思ったら…」

『いきなりすみません!もしかして、貴方がFですか?』

『いえ、私は助手のようなものですよ』

『お願いします!Fさんにどうか取り次いではいただけませんか』

『…切羽詰まっているようですね。Fは人前に姿を現すのが好きではないので、私が変わりにお話を聞きます。どうしましたか?』

『…この宝石を見てください』

『これは…ムーンライトスターですね』

『流石、ですね。一目で見破ったのは貴女だけですよ。助手だからと侮っていました。申し訳ありません』

『それをお持ちということは、ブラックスター家の方と存じ上げますが、その様な方が何故?』

『…実は』

男は語り始める。
男には妹がいた。妹はいきなり結婚すると恋人を連れてきた。相手が身寄りのない一般人であることで両親は認めず、結婚するならば勘当だと追い出した。身寄りがないからと愛する二人を無理に離そうとするのは間違ったことだったのだろう。けれど、いくら間違った行為とは言え、それは確かに子供を心配する『親心』だったのだ。
妹とその相手の間にはいつしか子供が産まれ、産まれた後も彼らはしっかりと考え行動していた。両親も影からその姿を見て見直したが、勘当を口に出した手前、簡単にそれを撤回することはできなかった。
その矢先、妹は突然の事故で亡くなった。娘だけを残された旦那は男手一つで頑張った。両親も男も、旦那や子供には気付かれないように支援した。
だって残された旦那に今更何を言えるというのか。仲を直すには遅すぎたのだ。

その見守っていた姪が良い相手を見つけて、来週式をあげる。遅いのはわかっている。

『けれど、うちに伝わるこの宝石を、本当なら分け与えられるはずだった妹の代わりに彼女に渡したい』

そう男は話を締めくくった。


「自分達の想いを全て込めたものを作れるのは私しかいないって」









CreationDate:2005.07.26
ModificationDate:2015.04.01




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