Episode1.02

「あれ?前からこんなチラシ貼ってたっけ?」

シードルはこの日学校が休みだったため、街から一本道を挟んだ芸術通りに絵画雑貨を買いに出掛けていた。いつものように馴染みの店に行き、そこの主人と軽い会話を交わしながら品を選ぶ。
選んだ品をカウンターに置いたところで、レジの横に貼ってあるそのチラシに気付いた。


「そっか、お兄ちゃんもウィルオウィスプの生徒だったよな」

「うん。けどこれは知らないなぁ。F?」


主人が言うには、元々このチラシは芸術通りの掲示板とチラシ置き場にしか置いていなかったらしい。
依頼者の口コミに口コミを重ねた結果、 オススメとして自分の店に貼ったり、むしろ依頼者が自分からチラシを配るということで、今やそこそこの人気を博しているようだ。


「そういう俺もその一人だ」

そう言いながら指す写真立ては重厚な木で出来ており、細かな装飾が彫り込んである。

「へー!これは凄いね」


「これ!Fの店なの?私も頼んだのよ!」

まじまじと装飾を見ているシードルと主人の会話に、店の常連客が割り込んだ。


「この髪飾り!祖母の形見だったんだけど割れてしまって、町の宝石屋に修復は不可能だって言われてね。恥ずかしながらベンチに座って泣いてたら、女の子が話しかけてきたの」


『大丈夫ですか』

『あっ…ごめんなさい 、…大丈夫です』

『あの宝石屋から出てくるところを見ていましたが…良かったらお話聞かせて頂けませんか』

『…祖母の形見が壊れてしまって、持っていったけど直せないって…』

『さっき芸術通りを歩いていたんですが、こんなチラシがありました。ダメ元で依頼してみてはいかがですか』


「そういってそのチラシを渡してきて。プロの宝石屋が駄目だって言ったんだからどうせ無理だわって思ったんだけど、場所がウィルオウィスプだったから、もしかしてって思って藁にもすがる思いで送ったの。そうしたら元通りになって返ってきて!もう感動したわ!」


常連の女性や主人の話を聞いて興味を持ったシードルは、チラシを一枚貰って帰ることにした。









CreationDate:2005.07.03
ModificationDate:2015.03.29




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