15 荷物の移動が終わり、四人に礼を言う。三人は、また何かあったら頼ってくれ、と言いながら帰っていった。足りない誰かは皆様の想像通りである。 残りの作業を続け、全てが仕上がった頃には時計は夜中を回っていた。 風呂に入り、布団に潜る。夢を見た。 辺りは真っ赤で、倒れている子供が数人。 その真ん中に立っている女の子。 あれは小さい頃の私だ。 大人たちが悲鳴を上げて子供を助け起こす。 『私』を見る目は軽蔑と恐怖に満ちていた。 バケモノ、異端視、気持ち悪い 音の無い世界で、大人の口がそう動くのを読み取る。 『私』は一人の女をすがるように見上げるけれど、その女の目も周りと同じだった。 女の口が動く。音が聴こえる。 「アンタナンテウマナキャヨカッタ」 「…、」 夢から覚めた私の視界は歪んでいた。体の震えが止まらない。 気付けば私はソルトの部屋の前にいて、手は勝手にインターホンを押していた。 「なんだよ?」 夜中にも関わらずソルトは起きていた。 「ごめん、一緒に寝ていい?」 「はぁ?」 「嫌な夢見て」 上手く笑えてない私に眉根を寄せる。 溜め息を一つ吐いて何も言わずに私を部屋に入れてくれた。 なんだかんだソルトは優しい。…前から知っているけれど。 「どんな夢みたんだよ」 ベッドに横になりながら聞くソルトに夢の内容を話した。 「ただの夢にビビるとかガキかお前は」 「うるっさいなぁ。怖かったんだから仕方ないじゃん。ソルトには言われたくない!身長変わらない…いたたたたたごめんなさい」 私達のコンプレックスは身長である。でもその話出すだけでアイアンクローって。ソルトだって大人気ないじゃん! そう考えて、恐怖心が消えていることを自覚した。わざと憎まれ口を叩いてくれたんだろう。(でも身長出した時のアレは本気だった) 女の子が子供を傷付けたらしくて、周りからバケモノって言われてた。ただそれだけだったんだけど、何か怖くてね。 アンタナンテウマナキャヨカッタ 見覚えのある女とその女の発言は、ソルトには伝えなかった。 CreationDate:2005.01.31 ModificationDate:2015.03.26 [ 15/18 ] [ 15/59 ] [Put a Bookmark] ← 戻る |