落乱1(天女ネタ)
2015/06/11 02:02

六年で優秀なくのたま主人公。
恋人が天女に取られたが何もしないどころか周りを宥める。


「悔しくないんですか!」
喚いて、詰め寄った。


「悔しいよ」


綺麗に笑ったその人は、けれど、と言葉を繋ぐ。

「忍は恋に溺れるべからず、でしょう?」

微笑んで、でも一筋の涙が伝うその顔を見て、私たちは今最低なことを言ったのだと悟った。

ああ、ああ、そうだ、この人は。優秀だと、天才だと言われている人なのに!誰でも最初に習う三禁を忘れているはずがないのに!悲しくない?好きじゃない?私たちはなんて酷い事を言ってしまったのだろう。くのたまなのだ、心を偽る技は熟知しているじゃないか!いくら悲しくても優秀なこの人が私たちの前で無様に泣き喚くことなどありはしないのに!
泣かせてしまった。この人の最後の糸を、何も知らない、知ろうとしなかった私たちが最低な手段で切ってしまった。

「…………、ごめんね、情けない。忘れてちょうだい」

瞬間的に涙を拭い、苦笑いするかの人には泣いた様子は見られない。けれどあれは、確かに彼女の弱さだったのだ。

「せんぱい…」

誇り高いこの人を感じて悲しくなった。本当に悲しいのは先輩なのに、涙か止まらない。

「なんであなた達が泣くの。……泣くんじゃないの、綺麗な顔がむくれてしまう。くノ一が泣く時は、それを意図とする時だけよ」

「私たちは、まだ、くのたまです」
「だからまだ、泣いてもいいんです」

そう言って余計に泣く私たちを、誰よりも強く優しい人は困ったように笑って宥めてくれた。

…ホントは逆なのに。泣くだけで何もできなくてごめんなさい。

いいの、と頭を撫でられる。

代わりに泣いてくれてありがとう、と聞こえた気がした。




恋人は六年。
立花仙蔵か善法寺伊作あたりかなぁ。
主人公の悲しみの隙を狙って、五年生、鉢屋三郎か久々知兵助あたりが入り込む。
尾浜勘右衛門でもあり。



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