04
次の日
昼休み/Aクラス
「眠り姫、ですか?」
一十木君と聖川様、四ノ宮さんと昼食をとっていると、聖川様がそう切り出しました。
「ああ、知らないのか?」
「はい、アイドル志望の方なんですか?」
「Sクラスに所属しているアイドル志望だ」
Sクラス、その言葉が頭の中で反響する。
もうパートナーを見つけるには、Sクラスの方しかいない。
「俺知ってる、授業中だろうがテスト中だろうが寝ちゃう問題児でしょ?」
「確か、レコーディングテストでいつも再テストの方ですよね?」
「まあ、そうだな」
「その方がどうかしたんですか?」
私がそう聞くと、聖川様は少し悩む様子をしてから、私を見た。
「神宮寺がお前のパートナーにどうだ、と言ってきたのでな」
「え?」
パートナー。その言葉を頭の中で繰り返す。…手当たり次第様々な人に尋ねては玉砕。その繰り返しの中で、初めて希望が見えた気がした。
「えー!俺は絶対に反対だよ!」
私がそう思っていると、一十木君が声を上げる。
「いつだって寝てるって噂だし、レコーディングテストは毎回再テストだよ?そんなの七海のパートナーに相応しくないって!」
「い、一十木君、Sクラスの方でにそんなこと言っては…
「クラスなんて関係ないよ!そんな不真面目な奴、君に相応しくない!」
力強い目でそう言ってくれる一十木君。でも今の私に、パートナーを選ぶ権利なんてないですし…
「…落ち着け一十木」
「マサはいいの?俺は納得出来ないよ!」
「俺も神宮寺にそう言われた時はそう反発したが、相手はSクラス。一応成績優秀者だ。それだけではないのだろう」
「それは!…そう、だけど…」
「それに、まだ眠り姫がハルのパートナーになると決まったわけではない。そういう生徒がいる、というだけだ」
「うっ…」
「まあ何はともあれ、候補が見つかってよかったですねーハルちゃん」
四ノ宮さんが優しく微笑んでそう言った。そうだ、候補すらいなかったこの状況で、パートナー候補が見つかるのは喜ばしいこと。
「あ、はい!」
私は感謝の気持ちを込めてそういった。
その直後
教室のドアが乱暴に開かれた。
また学園長かと思っていたら、一人の女子生徒が入ってくる。
「…………」
寝癖のようなボサボサの髪に、だらし無く着崩した制服。眠そうな半開きの瞼で誰かを探しているのか、辺りを見渡している。
そして
「!」
目があった。
その人は少しだけ微笑んで私達の方へやってくる。先程まで賑やかだったクラスは静かになっているが、そんなこと気にならない様子だ。
「七海春歌さん?」
「あ、はい」
目の前に立たれると遠くではわからないこともわかってくる。…この人は、自分の世界を持っている人だと。だらしない服装や、たくさんの寝癖や寝跡、でもそれでも、この人には圧倒的な存在感があった。
「私、Sクラスの都静香」
名前を聞いただけではわからなかったが、いかにもさっきまで寝てました、というような様子で、彼女が先程話していた眠り姫だと理解した。
「七海さん、パートナーいないんでしょ?私の曲、作ってみない?」
眠そうな顔から一転して、都さんははじけるような笑顔でそう言った。
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