01
「…いい加減にしてくれませんか?」
「…なにをよ」
私がそういえば、我が幼なじみは渋々といった様子で顔を上げる。至るところについた寝癖や寝跡で、元の整った顔立ちが微塵も感じられない。…全く、アイドル候補生としての自覚がまるでないですね。
「いい加減、パートナーを見つけなさいと言っているんです」
「パートナー…ね」
この早乙女学園では作曲家とアイドルの二人一組でデビューを目指す。ところが彼女のパートナーは入学から一ヶ月で学校をやめてしまった。…まあ原因は彼女なんですが。
「…私とデビューするんでしょう?」
HAYATO片手にデビューなど…無理だと決め付けていた私に、彼女がサポートを申し出てくれた。…それが、今はどうでしょう?私の方が彼女のサポートをしている。
それに、
「…まあ貴女には子役時代の実績がありますから、甘く見ているのかも知れませんが」
私が彼女と出会ったのは私が劇団員として過ごしていた幼少の時。当時、彼女は天才子役として名をはせていた。が、突如留学して芸能界を去っている。そのため彼女の知名度は低いが、さすが早乙女さんと言ったところでしょうか、彼は彼女を見抜き私と共にこの学園に招いてくれた。
「…別に、子役時代なんてほんのちょっとしかしてないじゃない。あんなの実績にはならないよ」
どこまでも面倒そうに静香は言う。言うなれば、彼女は究極の我が儘体質だと私は思う。自分の好きなことにしか興味がなく、本気を出さない。まあ一種のこだわりと言ってしまえば恰好はつきますが…
「とにかく、一刻も早くパートナーを見つけなければ、デビューどころか、卒業オーディションすらでられませんよ」
「あーはいはいわかりましたわかりました」
両手を上げて聞き飽きたような表情をする静香。私だってこの台詞を何回言ったかわからない。
「大丈夫だって。一応目星はつけてんの」
「…………」
教室に来ては寝て、寮でも寝て、そんな彼女が一体誰に目星を付けているんだか。
「一応聞いておきましょうか」
そう聞けば、彼女は楽しそうに笑いながら
「Aクラス、七海春歌」
一人の少女の名を言った。
top