全力疾走 | ナノ



運び屋と陸上部



北沢とダイエットをし始めて少し経った頃のこと。

「丸井君、ちょっと話があるんだけど」
「ん?」

昼休みのチャイムと同時に話かけられた。

「えーと、確か女子陸上部の…」
「そう、そこの部長。てゆうか2年の時同じクラスだったんだから名前ぐらい覚えといてよ」
「あ、わりぃ」
「本題に入るよ。丸井君さ、北沢さんと仲いいよね?」
「北沢?まあ仲いいけど」

俺がそう言うと、部長はすげー嬉しそうな顔をした。

そんで、


「一生のお願い!彼女、陸上部に勧誘して!!」

「は?」


そんなことを言った。









「…先輩?上の空ですけど、どうかしました?」
「ん?あ、ああ。なんでもない」

昼休み、走りながら考えるのはさっきのこと。


『丸井君だって毎日一緒に走ってるんだから、彼女の凄さわかるでしょ?』

そりゃあ、わかるよ。

『彼女、何度誘っても入ってくれなくて…その話をすると逃げるんだよ』

…部長。確かこの学校で1番足速かったよな。

『とても良い走りをするし、彼女は我が部に必要な人材だと思うんだ』

だよなー。ちっこいくせに体力あるし、足速えーし。

「なあ、北沢」
「はい、なんでしょう」
「お前、陸上部入いんねーの?」
「え」

俺がそう言うと、北沢のペースが乱れた。

え、俺なんかまずいこと聞いたのか?

「えっと、陸上部ですか?」
「あ、ああ…」
「あの、ずっと勧誘されているんですが…」
「ですが?」
「断ってます」
「なんで」
「…何と言うか…その」

北沢は頭に手を置いて悩んでる。

…なんか言いづらいことなのか?でも、

「お前ってさ、スゲー楽しそうに走るよな」

ホントに楽しんでることがわかるから、北沢を1番生かせるのは、陸上部なんだろう。運び屋でも、俺のサポート役でもなく。

「…北沢?」

いつの間にか50周終わったらしい。北沢がペースを落とし始めた。

「走るのは、好きです」

「なら…」

「だからこそ…本気の人とは走れないんです

「え?」

最後、小さくて聞こえなかった。

「なんでもないです」

北沢はそう言って笑い、駆け出す。

「では丸井先輩、お疲れ様でした!午後もよろしくお願いします!」

いつもの敬礼のポーズをとりながら、校舎に戻って行った。

…後ろ向きのまま走るって器用だな。

って、違げーよ!
それより前に思うことあんだろ俺!
はあ…

「………」

…なんか、後味悪かったな。

柳にでも聞いてみるか。






…走りたい。でも、私は、




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