ミーハー | ナノ



「君…イケメンだね」



放課後

俺とあいつは小学生からの付き合いだ。貞治と三人でつるんで、あいつにはマネージャーを頼んでいた。俺が引っ越した後もあいつとはちょくちょく連絡をとりあっていた。あのイケメン好きな性格は俺や貞治と会ってから出て来たが、どうしてだかわからない…
そんな破天荒な奴とこれまで付き合って来れたのには理由がある。

「怜香」
「何?蓮二くん」
「その大量のカメラはなんだ」
「ああ聞いて!バスケ部の橘君と仙道君がイケメンさんなんだって!もう行くしかないよねー」
「……………………………そうか」
「だからその間は何よ」
「………」
「ほんとはさー蓮二と丸井君のいるテニス部もイケメン多しと聞くから行きたいんけど…蓮二は昔から練習中に騒がれるの嫌いだからさーやーめた」
「そうか」

俺は怜香のこういうところが好きだったりする。
あいつは他人が嫌がる事をしない。どこまで許されるのかをちゃんとわかってる奴だ。だからあんな破天荒でも友達は居るし、人に嫌われる事はない……引かれる事はしょっちゅうだが。

「さーてと準備出来たし体育館に行こうかな!」
「ああ、俺は部活に行く」
「いってらっしゃーい!今度一緒に帰ろうねー」
「了解した」

俺にとって、気が許せる相手である事は確かだ。



校舎裏

やっべクラスの奴らと話してたら遅れちまった…もう遅刻じゃん。真田副部長の裏拳やだな。近道通ってけっど…はあ無理か。

しばらく下を向いてトボトボ歩いていると、いきなり両肩に手を置かれた。驚いて顔をあげると、すげー綺麗な人が目の前にいた。

「…………」
「…………」

長いまつげ、さらさらの髪、そしてつやつやの唇。顔のパーツを崩さない様に施されたナチュラルメイク、微かに香るシャンプーの香り…美人の要素を全て持ってる人だった。

「……なんだよ」

気恥ずかしくなって、そう言うと


「君…イケメンだね」
「へ?」


第一声がそれだった。


「かなり癖のある黒髪と吊り上がった大きな目これはポイント高いねー生意気そうな少し高めの声もちょちょちょーっとかなりナイス!」
「…………」

なんだこの人。初対面、だよな…?ミーハー…にしては化粧濃くないし。あ、この人三年だ。

「おや?固まってるねー」
「え…そりゃあ…」

あんなマシンガントーク決められたら固まるしかねーだろ!

「駄目だよイケメンさんは笑ってて欲しいなーはいピースピース!!」
「ピース、ピース…?」
「いいねー!今度違うポーズいってみよー!」
「チェケラー!」

って俺何やってんだああああ!?
乗せられちまったよ!!

しばらく謎のテンションに逆らえず写真を撮られた俺…

「ふー!いやー君ノリいいね!」
「…そ、そうっすか?」
「素敵な写真を撮らせてくれたお礼!これをあげよう!」
「あ、あざっす」

ムースポッキー…地域限定キャラメルメラメラチョコ苺味。

なんだこの味。

「そうそうイケメンさん」
「なんすか…?」
「実は道に迷っていたのだよー体育館ってどこだい?」

道に迷っていたのかよ!!

「…体育館はそこの角曲がって突っ切ったところっすよ」
「そかそか!ありがとうイケメンさん!またいつか会えるといいね!」
「はあ…」

嵐のようなあの人はあっという間に消えた。


テニスコート

「赤也!遅刻とはたるんどるぞ!!」
「あ、真田副部長…すみませんした…」
「む?」

赤也が遅刻…これはいつもの事だが、今日は様子が違った。

「どうした赤也?」
「あ、柳先輩…不思議な事があったんすよ、すげー綺麗な人が出てきて…嵐みたいにあっという間に消えて…夢だったんすかね?」
「………綺麗な嵐のような人…だと?」
「すげーマシンガントークで…俺がイケメンだって写真撮って、夢っすかね?」
「…………」

怜香…
あいつは人の後輩に何を言ってるんだ…

「柳…それって……」
「ああ…怜香だろうな」
「怜香?怜香先輩っていうんすか?」
「秋津怜香、柳んとこの転入生だぜぃ…ほら…ミーハー通り越して別次元にいる奴だったろ?」
「言われてみれば…」
「はあ…」

黙っていれば美少女なのにな…









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