ミーハー | ナノ



長髪の麗人



昨日は散々だった。

呼び出された場所に行けば案の定…騒動。あと少しで警察ざたになるのでは?レベルまでいった。

なんとか仙道さんをその場から引き離し、家へ。出来のいいホイップは少し固くなってしまっていた。あの滑らかな塗り心地はもうない。

ストレートで大暴れした仙道さんは、どこかすっきりとした様子で、そのまま自室に戻っていく辺り、機嫌よかったんだろう。俺もケーキの仕上げを終わらせてさっさと寝た。

はっきり言ってしまえば目覚めは良くない。仙道さんと居て日常に飽きはこないが、昨日のような騒動が多々ある。いい加減疲れてきた。

重い体を無理矢理起こし、寝ぼけ頭をたたき起こすためリビングへ。ブラックコーヒーでも飲もう。

そう思いながらリビングの戸を開けると


「…おや?」


見知らぬ人がお茶を飲んでいた。

「…………」

俺は思わず一度開けたドアを閉める。

深呼吸を一つしてから、もう一度。

「…………」

状況は変わらなかった。
薄茶色の髪を一つに束ね、中性的な顔立ちの人がお茶を飲んでいる。

「おはようございます」
「…おはようございます」

優雅に挨拶をされれば俺もしない訳にもいかず、ぎこちない挨拶を返した。俺は初めて“麗人”と呼べる人に出会った気がする。歳は同じくらいだろうか?

「どうです?ご一緒に」

整った顔に微笑を携えてその人は、机に並んだクッキーや紅茶を指さしそう言った。

「…どうも。あ、いや、俺はコーヒー派なんで紅茶は結構です」
「そうですか」

特に気分を害した訳でもなく、その人は紅茶をすする。俺も当初の目的だったコーヒーを入れ、席につく。

「おや、ドリップですか。しかもブラック…まだ若いのに粋ですね」
「…え?」

同じくらいの人に若い…俺は言い方に疑問を感じてその人を見ると、その人は変わらない笑顔で紅茶を飲んでいた。

…………というか。

なんで俺は見ず知らずの人を茶を飲んでいるんだ…?いや、なんかこの人には人を安心させる雰囲気がある。柔らかいような、でもどこか威厳があるような…そんな雰囲気だ。

「…あの、」

でも、こう飲み会をしても仕方がない。

「…何者ですか?」

俺の質問に、微笑みで細められていた瞼が少し開き、鋭い眼光が俺を見つめる。

でもすぐに元の微笑みに戻り、カップをソーサーに置き、俺を見た。

「はじめまして。聖帝学園で数学を教えています、衣笠正次郎です」

胸に手を置き、その人はそう言った。



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全ての元凶 笑






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