ミーハー | ナノ



そんな日常



俺達がこちらの生活に慣れだし、仙道さんが”立海の悪魔”と呼ばれ出した頃のこと。

「キェエエェェェー!!!!」


昼下がりの校舎に、高らかな奇声が響いた。…正確に言うと悲鳴なんだが。

ああまたか。

最早その悲鳴が日常になってしまった立海生達は、そう思い生活に戻って行く。

「またんかー!!仙道ー!!!」
「待てと言われて待つバカがどこにいンだよ!オマエ、バァカだろ!!」

この追いかけっこも日常炒飯事だ。…間違えた、茶飯事だ。
仙道さんはともかく、真田さんも学習すればいいのに。

「仙道君!真田君!廊下を走るのはやめたまえ!!」

止めに入るのは必ず柳生さんだ。

「メガネー!オマエもくらいやがレ!!」
「なっ!?」

まあ止める前にやられるのがオチなんだが…。ちなみに仙道さんが真田さんと柳生さんに水鉄砲でかけたのは、超強力ネバネバエキスというもの。美容に効果があるらしく、最近真田さんの肌が綺麗になった気がしなくもない。まあ普通にネバネバして気持ち悪いが。

でも俺としては真田さんや柳生さんにイタズラの対象が固定されてよかったと思ってる。初めの方は、一緒に住んでる俺にイタズラが多発。寝ているときに蛇の剥製が降ってきたり、ご飯にタバスコがかかってたり…子供のような、高三にみえないイタズラが俺を襲った。

『…もうご飯も、ケーキも作らないっスよ』

いい加減疲れた俺がそう言うと、

『チッ…しょーがねーナァ』

と言う言葉が返ってきた。これのお陰で、俺へのイタズラは減ったが…隙を見せると仕掛けて来るのが仙道さんだ。油断は出来ない。

一般生徒にも仙道さんのイタズラは及ぶ。その度に謝るのは俺だ。手頃なお菓子を作って被害者に謝りに行く。でも最近は真田さんや柳生さん、一部のテニス部レギュラーが被害者なので俺はとしては荷が軽くなった気持ちだ。

「すいません、柳さん。うちの仙道が」
「気にするな、橘。こちらも部員が学習しなくて悪いな」
「あ、今日はマドレーヌを作ってきたんスよ」
「マドレーヌか、丸井が喜びそうだな」
「でも柳さんは和菓子が好みなんスよね。今度挑戦してみます」
「ああ、期待している」

家が日本家屋の柳さん。俺も家があんなんだからすげー親近感が湧いた。テニス部の人達とはなんだかんだ仲がいい。この人達も、なんと言うか…他の人達とは違う雰囲気を持っていると俺は思う。まるで…そう。この世界においての特別な存在のような…そんな雰囲気。

「おい橘ー!」

そんなことを考えていると俺を呼ぶ声がした。振り向くと……………切原らしき人がいた。

「………」
「………」

俺と柳さんは二人で絶句。まあ無理はない。なんせ切原は…アフロヘアーだったから。

「…赤也、お前にそんな趣味があったとはな。俺のデータを更新しておこう」
「その髪型はないだろ、切原」
「仙道さんのせいだ!!!」

苛立ちながら切原はそう言った。要約すると…教室で寝ていて、起きたらアフロだったようだ。

「このカツラ全然取れないんスよ!!」

このイタズラは俺も受けたことがある。カツラの内側に超強力接着剤が付けられていて全くとれない。でもある一定時間過ぎると、自然にとれるらしい。仙道さんいわく、頭皮に優しい成分だから抜け毛の心配はないとのこと。

「あと2、3時間したら自然に取れるから待ってろ」

俺がそう言うと、切原は「あと3時間もコレかよー!!」と嘆いた。



新しい知り合いが出来て、仙道さんがバカやって、皆で楽しむ。
そんな日常の中、



「では明日から、立海生として頑張ってくれたまえ」
「はーい、よろしくお願いしまーす」



新しい歯車が回りだした。










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