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孤高の王サマ





「すげぇ…」

コートを駆け巡る仙道さんに、俺はただただ目を奪われた。

少しだけ前のこと。
バスケ部へ見学に行った俺達。するといきなり…

『オイ!お前ら!この仙道清春サマが、相手になってやるゼ!5対1で掛かってきヤガレ!!』

とか言って仙道さんは勝手に試合を申しこんだ。5対1など無謀とも言える試合に冗談だろと部員達は笑ったが…

『ナンダぁ?このバスケ部は腑抜けばっかダナァ!!ケケケッ!』

と言う仙道さんにのせられて試合開始。あーあ。仙道さんも仙道さんだが、のせられる部員もどうだろう…ただの子供のケンカもいいとこだ。

馬鹿にしていた部員達。でも試合開始からの仙道さんの動きを見て、目の色が変わっていく…


試合は…試合にならなかった。


孤高の王


5人いる部員達の間を縦横無尽に駆け巡る仙道さんには、そんな言葉がよく合っている。部員達はゲームスタート時にしかボールに触れなかった。上手い、とかのレベルじゃない…次元が違う。この人の為にバスケットボールがあると言っても、過言ではないと、俺は思った。

試合終了のホイッスルが鳴る。勝敗は、明らかだった。

「ケン」

試合を終えた仙道さんがボール片手に、俺に近づく。

「オマエ…バカじゃねェ?」
「は…?」
「ンだよ!そのシけたツラはよォー!見ててイライラすんゼ…」

仙道さんは俺を見てそう言った。

「オマエが悩んでんのは、この世界で俺は異端だー、とかンなツマンネーことダロ!」
「つ、つまんないって…」
「いいカ!この世の中、どんな世界でもナ…気持ちイイこととツマンネーことの二つしかねーンだよ!あとはツマンネーことをどう気持ちイイことに変えるかダ!」
「!」
「俺様はナァ…今イラついてンだよ。わけのからねー世界に連れてこられて…見えない誰かの掌の上で躍らされてるみたいで気持ちワリィ。俺達を連れて来た奴はなァ、俺達のあわてふためく姿が見てぇンだ。だから…」

仙道さんはそこで言葉を切り、俺にボールを押し付けた。

「自分の置かれた状況を、楽しみやがれ!」

随分勝手な言い分だと思った。でも、それももっともだと思った。俺はボールをしばらく見つめてから、仙道さんに向き直る。

「そうスね」

俺がそう言うと、仙道さんは満足げに笑った。
あの人なりに、俺を励ましてくれたのかもしれない。









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