ミーハー | ナノ
「君の写真一枚で手を打とう」
「どうして…!?」
亮と立海のマネージャーが食堂から出たから、あとをつけてみたら…仲良くなってた…!なんで!?なんでよ!?その人ミーハーじゃない!てっきり文句を言うと思ってたのに!!おかしい!!おかしいよ!!
私がこんなに我慢して皆と接してるのに!
私だって景吾や侑士達の事、かっこいいとか!イケメンとか!騒ぎたいのに!なんで騒いでて嫌われないのよ!?
「美佳先輩、どうかしましたか?」
!!
しまった!今は練習中!しっかり応援しなきゃいけないのに!!
「長太郎!ううん!なんでもないよ!はい、ドリンク!」
「ありがとうございます」
長太郎は優しく微笑んで、そして…固まった。
「どうしたの?長太郎」
「い、いえ…ちょっとトイレ行ってきます」
「?」
どうしたんだろう…ドリンクボトルくらい置いて行けばいいのに。変な長太郎。
…あれ?
「若!どこ行くの?」
「…どこに行こうと俺の勝手でしょう」
「う…でも、私マネージャーだし…」
「はあ…秋津さんが昨日立海にタオルを貸したらしく、今足りないので取りに行くんですよ」
「じゃあ私も行くよ!」
「いえ、結構です」
「うー若、つれない…」
「いいからさっさと仕事してください」
若はスタスタと行ってしまった。このツンデレめ。…そういえば、景吾はどこに行ったんだろ?ちょっと探してみようかな。
いろんな場所を探しても見つからず、ついには立海の場所まで来てしまった。…もしかしたら、幸村君と部長会議でもしてるのかも!そう思って覗いてみると……
「はい日吉君。わざわざ取りに来てくれてありがとうね、助かっちゃった」
「いえ、元々はこちらの不備なんで」
ミーハー女と若がいた。
「…すいませんね、ウチのマネージャーが使えなくて」
え…?
「まあ洗濯物は溜まっちゃうよね。気持ちわかるからなんとも言えないかな」
「そうですか」
なんで、なんでよ…私は…こんなに…
「秋津さん、頼みがあるんですけどいいですか?」
「君の写真一枚で手を打とう」
「…………………………柳さんに言い付けますよ」
「私イケメン君の頼みならなんでも聞いちゃう!」
「はあ…」
「こらため息つかない私先輩」
「…本題ですが、俺の分のドリンクを立海のついでに作ってくれませんか」
え?
待ってよ若!ドリンクなら私がつくってるじゃない!!
「あら、これで三人目」
は…?
「さっき泣き黒子の君にも、樺地君の分と二人分頼まれたんだよねー」
景吾と、かばちゃんも…?
「…跡部さん…抜け駆けですか。流石ですね」
「ていうかさ、ドリンクなんて水に粉混ぜるだけだよ?そんなに飲みたくないもん?」
「あの人は天才ですよ。今日は何故か固体化していました。鳳なんか見た瞬間に固まって、トイレに捨てに行った程ですよ」
「わーお、斬新だね」
あ、あれはちょっと固まっちゃっただけで!いつもそうじゃないもん!ていうか長太郎!トイレに捨てに行ったの!?
「他にも、ボール磨きをやらせたら食器洗い機に突っ込もうとするわ、スコア付けさせたら何故か彼女のサインが書いてあるわ、天才なんですよ」
「うん、新しいね」
「流そうとしてませんか?」
「あ、わかる?」
だ、だ、だって凄く汚れてたから!機械でやったらすぐに綺麗になるんじゃないかって思って!スコアだって!景吾が無言で渡してきたからとりあえず名前を書けばいいのかなって思ったの!
「まあ、そういうわけなんで。ドリンクお願いします」
「はいはーい、かしこまりましたー」
そう言ってミーハー女と若は別れた。その場に残ったのは、影に隠れていた私だけ。
「…………」
亮に景吾に若…なんで?どうしてあんなミーハー女に…。わかんない。わかんないよ。皆ぎゃーぎゃー騒ぐミーハーが嫌いだったじゃない…。だから私は我慢して…普通に接しようと…
…そうよ
きっとあの女が二日間マネージャーをした時に、皆を騙したのよ!きっとそうよ!なら…
「私が皆の目を覚ましてあげなくちゃ!」
私は透き通る程に晴れた空に、そう宣言した。