ミーハー | ナノ



「な、泣き黒子の君!?」



「ホンマに美佳はかわえぇなぁ」
「やだー侑士!私は可愛くないもん!」
「クソクソ侑士!美佳に近付くな」

「………」

バスに揺られて小一時間。俺達は氷帝の所有する合宿所に来ていた。いざバスを降りて見ると………氷帝レギュラーがくだらない茶番を繰り広げていた。

「…跡部」
「なんだ幸村」

冷めた目でその光景を見ていた精市が、茶番劇に参加していない跡部に声をかけた。

「どういう事かな?これは」
「…………はあ」

さりげなくため息をついた跡部。…氷帝にもいろいろあるようだ。しばらくはデータ集めに集中する事にしよう。

「で、お前らのマネージャーはどこにいる」
「ああ、彼女なら車酔いしてまだバスの中で寝てるよ。全く、トランプなんてしてるから。多分もうすぐ起きて来るよ、柳生が起こしに行ったから」
「…大丈夫なのか、その女」

「跡部」

二人の会話が一段落した所で、俺は跡部に声をかけた。

「アーン?」
「この合宿、何が起きても動じない心にが必要だ」
「?…どういう意味だ?」
「いずれわかる」

俺がそう言うと、精市が苦笑気味に同意して頷いた。そして…

「秋津さん、大丈夫ですか?」
「…ありがとう紳士くん、でもまだ気持ち悪い…」
「全く、柳君の忠告を聞かないからですよ」
「…ごもっとも」
「さあ、足元に気をつけて下さい。…ああ幸村君、秋津さん起こしてきましたよ」
「ありがとう柳生」

柳生が怜香を支え、バスから降りてきた。まだ顔色の悪い怜香は、顔を上げ、俺達を見て、固まった。

「…………」

訂正。正確には俺達の後ろの人物を見て固まったんだ。

「…………」

しばしの沈黙。破るのはもちろん…


「な、泣き黒子の君!?」


怜香だ。

「アーン?」
「なんて素敵な泣き黒子!!限りなく金髪に近い茶髪!吸い込まれそうな碧い瞳!どこからか漏れる王様の風格!!真ん中分けの髪形が決まってるぅ!!」

目の前の跡部は勿論、先程までくだらない茶番を繰り広げていた氷帝レギュラー陣も全員固まった。一方立海レギュラーは、やれやれまたか。と言った表情で見ている。慣れとは恐ろしいものだな。

「…おい幸村。これはどういう…
「声も素敵!!!」
「………」

跡部が怜香を白い目で見だした所で、俺は怜香に声をかけた。

「怜香」
「蓮二くん!!すごいイケメンさんだよ!!」
「……お前、バス酔いはどうした」
「あ」

怜香は思い出したようにハッとなり、次の瞬間、先程まで赤くなっていた顔があっという間に真っ青になった。

「…うぇ……忘れてた…気持ち悪……」

口元を手で抑え、うずくまる。

「はあ…跡部。手洗いはどこだ?」
「…そこの角を左だ」
「だそうだ、怜香」
「行ってくる……うぷ…」

柳生に付き添われながら怜香は消えた。

「…幸村。どういうことか、詳しく聞かせてもらおうじゃねーか、アーン?」
「詳しくも何も、うちのマネージャーだけど?」
「ただの雌猫じゃねーか」
「『何が起きても動じない心にが必要だ』って蓮二が言っていただろう?」
「……この合宿、まともなマネージャーが居ねぇな」
「確かにまともなのは居ないね。でも…」

精市は氷帝のマネージャーを一瞥したあと、跡部を見た。

「ちゃんと働くのは居るよ」
「…………」
「一緒にしないで欲しいな」

そう言って、精市はにこりと笑った。








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