ミーハー | ナノ



「あのブルジョアジー学校!?」



合宿当日。怜香は一般ジャージに身を包み、校門前に立っていた。

「あ、おはよう蓮二。今日もかっこいいね」
「………」

臨時マネージャーになってもこれは変わらないらしい。…まあ変わったら変わったで気持ちが悪いが。

「ふあ…」

まだ眠いのか、怜香はあくびを繰り返している。

「…眠そうだな」
「まあね、眠れなくてさ」
「珍しいな。寝ようと思ったらすぐ寝ることが出来るのは、お前の特技だろう」
「うーん。褒められてるのかしら…?」
「安心しろ。けなしている」
「蓮二くんのバーカ。まあ、話し戻すけど何て言うか、こう…ドキドキして眠れなかったみたいな?」
「嫌がっていただろう」
「そうなんだけどさ。もう決まっちゃった事みたいだし…なら仕方ないかなって思って。それに」

怜香はどこか懐かしむような表情で空を見上げた。

「教授のマネージャーなんて小学校以来じゃない?博士は居ないけど、ちょっと懐かしくてさ」
「ああ、そうだな」
「まあ、言われた事はやるから安心してよ。ちょくちょく写真は撮るけどね!」
「…さりげなくにしろよ」

…言ってもやめないことはわかっているので、俺はそう告げた。「善処するよ」と少し苦笑をしながら怜香は答えた。


しばらくして、合宿参加のレギュラー陣が集まってきた。ここで言うことでもないと思うが、もちろん赤也は遅刻してきた。いつもより3分27.5秒早かったが、遅刻は遅刻だ。全員が集まった所で俺達は合宿地へ行くバスへと乗り込んだ。

「で?合同合宿って言ってたけど、どこと合宿するの?」

前の方の席に一人で座った怜香が、後ろの席に乗り出して来た。…おいシートベルトはどうした。今はバスも義務だぞ。

「ああ言ってなかったかい?氷帝学園だよ」

精市がそう答えた。

「氷帝…学園…?」

顔をしかめながら、氷帝学園…と繰り返す怜香。やがてハッとした表情で声を上げた。

「あのブルジョアジー学校!?」
「フフフ、そうだよ」
「あのお金持ち学校ね!確か生徒会長が凄いイケメンって噂の!!しかもちょーお金持ちのお坊ちゃん!!これはちょっと楽しみになって来たかも!立海レギュラーだけでもイケメンばかりなのにこれはもうやばいどうしようフィルム足りるかな」
「怜香。フィルムは足りるから安心しろ。撮るヒマを与えない量の仕事がお前を待っている」
「げ…マジですか」
「ああ、マジだ」

怜香は少しふて腐れた様な表情してから、自分の席に戻って行った。

しばらくして、赤也やブン太達に誘われ、トランプをしに後方座席に移っていった。

「はあ…」

これからの合宿の事を思うと頭が痛い。

「心配事かい?」
「ああ」

隣に座っていた精市がそう聞いてきた。

「秋津さんの事?」
「………」

…あいつは仕事はちゃんとするだろう。俺は一体何について頭を悩ましているんだ。

「…怜香は言われたことはちゃんとする。だからあのマシンガントーク以外気にする必要はないとは思うんだが…何かが引っ掛かる」
「……その予感。当たるかもね」
「どういう意味だ?精市」
「言ってなかったけど、氷帝にも居るんだよ。女のマネージャー」
「…………」
「俺達はここ数日。彼女に関わって、彼女の人となりがわかってるからいいけど…初っ端からあのマシンガントークを決められたら氷帝の奴らはただのミーハーと勘違いするんじゃない?」
「…………」
「しかも自分達のマネージャーが可愛かったら尚更…ね」
「…なるほどな。その可能性は否定できない」
「氷帝のマネージャー、いい子だといいね」
「…ああ、そうだな」

心に一抹の不安を抱えながら、俺はそう答えた。









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