短編 | ナノ
ヒマワリのような笑顔
サンサンと太陽が照り付ける夏休み。
部活の休憩時間を利用して、俺は校庭の花壇を見に来ていた。
花達は太陽の恵みを受けて、キラキラと光って見える。
次はどんな肥料をあげようか。秋になったらどんな植物を植えようか。テニスも楽しいが、こうして園芸に没頭するのも、俺の楽しみの一つだ。
「おーい、幸村ー!」
しばらくして、名前がやって来た。
「ああ名前、どうかしたかい?」
「ど、どうかしたかい?って…もう休憩終わりだよ」
「あれ?もうそんな時間か」
少し没頭しすぎたようだ。彼女が呼びに来たということは皆もう練習を始めているんだろう。
俺はコートに戻ろうと花壇に背を向けると
「ねぇ幸村」
名前に呼び止められた。
「この花壇って幸村が手入れしてるの?」
「ああ、そうだよ」
「へぇ、綺麗だね」
そう言って名前はしゃがみ込み、花壇の花達を触った。
「じゃあ、水やりをしにきたの?」
「この時間に水をあげたら、根っこが腐ってしまうよ」
「え゙…そうなの?」
「うん」
「あちゃー」とか言いながらガクッとうなだれる名前。おそらく昼間に水をあげたことがあるんだろう。冬ならともかく夏だと致命傷だね。
そんなことを思っていると、不意に、名前は顔をあげ
「わあ!凄い立派なヒマワリ!」
隣にある花壇を見てそう言った。
「これも幸村が育てたの!?」
「いいや、俺はこの花壇だけだよ」
「そうなんだ。あ、そういえば…幸村の花壇にはヒマワリないんだね」
「まあね」
夏の花の代名詞、ヒマワリ。俺の花壇には植えていない。それには二つ理由があって、一つ目は皆植えると思ったから。俺まで植える必要はないだろ?もう一つの理由は…
「夏ていえばヒマワリじゃん!なんで育てなかったの?」
「ヒマワリはいいんだ。俺の近くに特別な一本があるし、もう充分」
「ああ、家で育ててるんだ」
「違うよ」
「え?…あーじゃあ通学路でよく見る的な?」
「それもハズレ」
「えぇ!?もうわかんないよー!」
名前は頭を抱えてうーんうーん唸ってしまった。そして急にハッとした様子で、俺を見た。
「やばい幸村!練習!!」
「あ」
そういえば、呼びに来てくれてたんだっけ。
「やばいよー!真田に怒られるぅ!」
そう言って駆け出す名前。俺はその後をゆっくりついていく。俺との距離が開いた所で、名前は勢いよく振り返った。
「幸村ー!早くー!!おいてくよー!!」
屈託のない爽やかな笑顔で、彼女はそう言った。
ヒマワリのような笑顔
その笑顔に、俺は今日も魅せられてる。
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夏まで待てない様に提出
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