微笑みの仮面劇 | ナノ



出会い


笑みというのは、優しい拒絶だと思う。

笑顔で周りを遮断して、本当の自分を隠してる。

とても、とても優しい、拒絶。

周りが信用出来ないんじゃない。

…いや嘘だな。信じられない、信じたくない。

まあそれには理由があって、誘拐や恐喝はもちろん…さらに周りからの媚びた視線。

そりゃあ世間に対する信頼は薄くなるわ。そうでしょ?

母親はストレス性の病気で寝込んでしまうし…父親はやれ会社やれ財閥で忙しくて…心配はかけられない。

だから私が真っ先に覚えたのは、


偽りの笑顔


高二になった今では、もう張り付いて標準装備にまでなった。まあそのお陰で人間関係はそれなりにうまくいってるけど。


でも”自分の中に誰も入れない”って事は、”本当の友達がいない”って事なんだよね。…別に欲しいとは思わないけど。

そう、面倒な事には首をつっこまない。これが鉄則。

なのに…


「…っ…ぐ…」
「最低女」
「いい加減学習しなさいよ!」


はあ、面倒事が向こうからやって来たよ。

ここは放課後の校舎裏。私の下では、3人の女子生徒が1人の女子生徒を囲んで蹴ったり殴ったり…いわゆるリンチとうやつが繰り広げられている。

ちなみに私は木の上。
この場所はお気に入りで、ここでぼーっとするのが私の楽しみだ。
…それを
…この至福の時間を…
まったく…言い争いだけなら見過ごすのに…リンチじゃ見てるだけで胸糞わりぃよ。

私はそっと木から降り、女子生徒達に近付く。

「何をしているの?」
「!?」

自分達以外から声をかけられたのが驚いたのか、リンチしていたの女子生徒達は勢いよく振り向いた。

「あ…天宮さん…」

靴の色からみて二年、同い年か。

「ねぇ、何があったか知らないけど…無抵抗の人間に対して酷いんじゃない?」
「あ…わ、私達…!」
「ねえ…
「わ!私達これで失礼するわっ!!」
「………」

おいおい…ちょっと話しかけただけじゃないか。逃げるように行きやがって、まったく。

「…ぅう……」

あ、忘れてた。
靴の色は…なんだこの子も同級生か。

「……あ…天宮さん…?」
「大丈夫?」
「う、うん…」

私は彼女に手を貸して、起き上がらせる。

「あ、あの…ごめんなさい、巻き込んでしまって…」
「…………」

あーあまったくだ。面倒な事には首をつっこまないが鉄則だったのに。でも謝る前にすることあるだろ。

「あのさ、謝る前にすること、あるんじゃない?」
「え…」

女子生徒は少し慌てた様子になり、しばらくしてハッとなった。

「あ…その…助けてくれて、ありがとう」

彼女はそういって少し微笑んだ。

「どういたしまして」

へぇ…綺麗な笑顔。私には出来ない笑い方だな。

「じゃ、何があったか知らないけど気をつけてね」
「え!?あ、あの!」

私はすたすたと歩いてその場を後にした。どうしてそうなったか聞くのもたるいし、いじめを注意しただけでも、私良いことしたー!って感じだしね。


でも…


「いい加減にしなさいよ!!」
「何様のつもり!?」
「愛歌いじめてさ!!」
「…ぅ…う……」


またか。…ちなみに一日たったから、次の日の放課後の校舎裏。

私の楽しみが…くそ…

えーと、靴の色は…あら三年の先輩方じゃないの!三年も堕ちたもんだな。

さてと。

私はまたそっと木から降りて、リンチ場に近付く。

「何をしてるんですか?」
「え…天宮さん!?」
「な、なんで…!?」
「…先輩方、無抵抗の相手に何をしてるんですか?」
「こ、これは…」
「…何が理由か知りませんが、よくないですよ。影でコソコソとか」
「で、でもこれはあの女が愛歌を…!!」
「先輩方」
「う…」
「よくないですよ」
「い、行くわよ!!」

昨日の二年よりは話せたな、流石三年。

さてさて…

「貴女も大変ねえ」
「ぁ、りがとう…」

倒れてる女子生徒にそう話し掛けると、苦しそうな声が返ってきた

「はあ…立てる?」
「…うん」

彼女の手を引っ張ると、少しふらふらしながら彼女は立ち上がった。。

「ふらふらじゃん」
「…平気……」
「そう」

明らかに強がりだけど、彼女が平気と言うんだから突っ掛かったってしょうがない。

「じゃ気をつけて」
「うん、ありがとう天宮さん」
「んー」

私はひらひらと片手を上げて挨拶に答えた。


そして

それから毎日、彼女は校舎裏でリンチにあっていた。


そしていつの間にか

彼女を助けるのが私の日課になっていた。








×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -