微笑みの仮面劇 | ナノ
自惚れ
「天宮さまー!」
「きゃー!」
「ステキー!!」
「皆さん、ありがとう。でももう少しお静かにお願いしますね」
「「「はーい」」」
「……なにあれ…」
彼女がマネージャーになって二日目の放課後。私がいつものように部活に行くと、フェンスの向こう側にいるミーハー達の人数が増えていた。しかも…I Love 天宮と書かれたうちわなんぞを持っていたりする。
「…ゆ、侑士、あれなに?」
「ん?ああ愛美は知らんかったなぁ。天宮さん、あの顔にあの微笑みやろ?俺らと同じくらい固定ファンがおんねん」
「へ、へぇ……」
「さすが氷帝のヒロインって呼ばれるだけあんなぁ」
「え…?」
彼女が…ヒロイン?
待って。
待って待って待って待って待って!
じゃあ私は何?私はこの世界に呼ばれたヒロインじゃないの?
穂高真奈美は?
彼女は何?
彼女は引立て役でしょ?
誰の?
天宮優の?
ちがうわ
私よ。私のよ!
そうよ!私がこの世界のヒロインなのよ!
穂高真奈美でも天宮優でもなく、私がヒロインよ!!
そうよ、私は選ばれた人間なんだから…
「…何をやっても、許されるわ」
「愛美?どないしたん?」
「ううん!なんでもないよ!」
「なら、ええんやけど」
大丈夫…穂高真奈美の時はうまくいった。私は同じことを繰り返せばいいの。あとはみんなが守ってくれるんだから。
私はフェンスの近くにいる天宮優を見た。
ねぇ、天宮さん。
貴女のその場所…私の場所なの。
さあ、私にソコ、返してね。
大丈夫よ。
ちょっとみんなに嫌われるだけだから…