微笑みの仮面劇 | ナノ
不可解
放課後
「愛美ー!一緒に部活行こうぜー!!」
「がっくん!いいよ!一緒に−−きゃっ!ち、ちょっと侑士!」
「すまんなー岳人、愛美は俺が予約済みや」
「クソクソ侑士!愛美は俺と行くんだ!」
「お、落ち着いて!三人で行こ?ね!三人!」
「…まあ愛美が言うなら」
「しゃーないなぁ…」
あははは!もう最高!!何この状態!天国よ天国!穂高真奈美が死んじゃって守られるおいしい立ち位置は消えちゃったけどホントに最高!レギュラーみーんな私の虜よ!景吾と若は照れてるだけだし!ジロちゃんは眠いだけ!あははは!もっと話し掛ければ好感度上がるわよね!もー完璧!楽しくて笑っちゃうわー!っとと…でもどうしよう。雑用係もかねてた彼女が死んじゃったのはちょっとだけ痛いかな。200人分のドリンクってどんだけよ!景吾にレギュラーと準レギュラーだけ作るね!って言えば平気かな?だって皆私だけの王子様だもの!
そんな事を思いながら私は二人と一緒にテニスコートへ向かった。
「……遅刻だぞ。姫川に忍足向日」
テニスコートに着くとレギュラーと準レギュラーが集合していた。私は景吾に近づいて必殺の上目遣いをする。
「ご、ごめんね!景吾!」
「……………気をつけろ」
ほーら!照れてこれしか言えないのよ?私も罪な女ー!
「おい、早くそっちに並べ。連絡事項だ」
「…連絡って、準レギュラーとレギュラー全員にする連絡なのかよ」
「ああそうだ宍戸。………おい!」
景吾はそう言って、部室に向かって叫んだ。その声に誘われるように、一人の女が出て来る。どこか冷めたような微笑を持つ女。
「今日から新しくマネージャーが入る、知ってると思うが…天宮だ」
「2年の天宮優です」
天宮と名乗った女は静かに軽く頭を下げる。
「天宮って…マジかよ」
がっくんは驚いた様にそう言った。
「がっくん、知り合いなの?」
「なんや、愛美は知らないんか」
「う、うん…皆知ってるの?」
「ええ、天宮財閥。跡部財閥の次くらいに大きな財閥ですよ。」
「今まで、部活なんてしなかったお嬢様がマネージャーなんてな…跡部の奴どうやったんだ?」
「…………」
跡部財閥の次って…そんなのゲームにも漫画にも出て来てない…なんなのこの女…!
「なあ跡部」
「なんだ忍足」
納得のいかない様子で侑士が聞いた。
「マネージャーなら愛美がいるやろ?なんで天宮さんまで出してきてマネージャーをやらせる必要があるんや?」
「二人が一人に減ったんだから補充しただけだ」
「…俺は反対だぜ」
亮が景吾を睨みながらそう言う。
「あーん?」
「また穂高のときみたいに愛美がいじめられるかもしれねーだろ!」
「…………」
景吾は静かに目を伏せた。そしてどこか力強い目で…
「俺は穂高が悪いとは思ってねぇ」
そう言った。
「なっ…!」
「え!?」
なんでなんで!?
「お前は穂高の味方なのかよ!?」
「け、景吾は、私の言うこと信じてくれないの…?」
「状況証拠だけじゃ判断はしねぇ」
「…っ!!」
どうして…どうしてなの…?私はこの世界のヒロインじゃないの!?
「姫川!」
「な、なに…?」
「天宮とドリンクの作り方を教えてやれ」
「……私、知ってますよ」
「場所は知らねぇだろーが」
「はあ…わかりましたわかりました。では先輩、よろしくお願いしますね」
「う、うん!こっちだよ!」
なんで景吾と親しそうに話してるの…!?わかんないよ!?なんで!?
私は心をわだかまりを抱えながら、天宮さんと一緒に部室へ向かった。