微笑みの仮面劇 | ナノ
誓い
真奈美から聞いたことがある。マネージャーにも準レギュラーとかレギュラーとかみたいに位があるって。マネージャーになるなら推薦貰うのが一番の方法らしい。
『私はレギュラーからの推薦だったから、直ぐにレギュラー付きのマネージャーになったんだよ』
『へぇ』
『私の幼なじみ、レギュラーなんだ!』
『すごいじゃん』
『でしょ!?名前はね−−−
そういえば、あの時の名前…
「……無理だ」
!
「…どうしてですか?」
「これ以上犠牲者を増やすのは得策じゃねぇ…大体お前は天宮の令嬢だ、それを……
「家なんて関係ない」
「………」
「家はどうでもいいんです。推薦してよ、私を」
私は跡部さんの眼を見た。
「………」
「………」
しばらくすると、跡部さんがフッと笑った。
「…いい眼をするじゃねぇか」
「え?」
「OK、明日の放課後から来い」
「!」
「…お前が覚悟を決めたんだ。俺も、同じ過ちは二度と繰り返さねぇ……俺がお前を守ってやる」
そう言った跡部さんの目は決意の満ちていた。
「一応期待しておきますね」
「あーん?一応とはなんだ一応とは」
そういって跡部さんは私に背を向けて歩き出す。
「帰るんですか?なら送ります」
「いや、穂高にもう一度謝ってくる」
「!」
「…許されるわけじゃねぇけどな」
跡部さんはそう言いながらここから立ち去った。
「…………」
一人残された私は、空を仰いだ。
「…綺麗」
東京の濁った空にしては珍しく、星がキラキラと輝いている。
『…お前が覚悟を決めたんだ。俺も、同じ過ちは二度と繰り返さねぇ……俺がお前を守ってやる』
覚悟…か
そうだね、跡部さん。明日から人生楽して生きようとしてた自分を少しだけ変えるよ。
でも…結局、私はなにがしたいんだろう?明日から私は晴れてテニス部マネージャー。
『…ふふ』
あの時真奈美の死を笑ったあの女、テニス部、学校の奴らに…
復讐
が一番近い気がするけど…なんか違う気もする。
『これ以上犠牲者を増やすのは得策じゃねぇ…大体お前は天宮の令嬢だ、それを…』
ああそうか…
私は私を犠牲者にしたいんだ
よく考えればそうだ。跡部家が本格的に動けば姫川愛美を追い出すことなんて、赤子の手をひねるくらい簡単なことだし…それは天宮家にしても言えること。私がわざわざマネージャーになることなんてない。
そう、私は彼女の立場に立たなきゃいけない。
彼女の受けた事、全部私は知らなきゃいけない。
「きーめた」
私はまた夜空をみる。
「私が貴女の居場所を取り戻す!姫川愛美の策略に乗るフリしながら叩き潰す!騙されたあいつらの根性も叩き直す!!」
真奈美
貴女優しいから、跡部さんと同じく丸く収めてほしんだろうけど…
私、貴女の言うこと聞いたことあった?
これは私の自己満足でやるんだけど、そうだなー。誓ってあげる。
私はもう泣かない。
貴女が私にしてくれてたように。
私はずっと笑顔でいるよ。
「この星空に、誓うから」