海寮 | ナノ



III



「ホリデーは、ユウ達とオンボロ寮で過ごすから無理」
「え」

今日は授業最終日。
闇の鏡からたくさんの学生が帰省していく。鏡の間は大混雑だ。そんな混んでいるところにわざわざ行くはずもなく、寮に戻って、オンボロ寮へのお泊りセットを仕込んでいるとアズールが訪ねてきた。

『リタさんはホリデーを寮で過ごされますよね?良ければ僕たちと一緒にボードゲームなどして過ごしませんか?』

とお誘いを頂いた。
が。悪い、先約が入っている。

「...お、オンボロ寮で、ユウさんたち、と」
「そう。この間パーティーメニューも注文して、年越しに届く予定なんだ」
「お、オクタヴィネル寮では駄目なんですか?僕たちも一緒に、」
「女子会」
「......」

固まってしまったアズールに、外泊許可書を押しつけて自室をあとにした。



オンボロ寮に着くと、ユウたちはまだいなかった。エースたち帰省組の見送りをすると言っていたし、まだ鏡の間だろう。この日、鏡の間はごった返している。

私が勝手に私室とした部屋に入り、寮から持ってきたお泊りセットを広げる。ホリデー分の衣服や歯磨きセットなどの生活必需品とは別に、モコモコのスリッパやブランケット、ルームウェアも持ってきた。オンボロ寮は肌寒いから、きっと必要になる。もちろん、ユウとグリムの分も揃えてある。多分似合うだろう。…あぁ私も結構浮かれているな。

「…お昼一緒にって思ったけど、もう時間だな」

今日はサムさんに頼まれた購買部の大掃除の日。今回のホリデーは残るつもりと、ユウとグリム用のモコモコを注文するときに雑談で漏らすと、給料はずむから大掃除を手伝ってくれないかと頼まれた。サムさんにはお世話になっているし、お給料が出るならやらない理由はない。臨時収入は大事だ。

夕飯までには戻る、と置き手紙をして購買部へ向かった。

購買部につくと、雑貨で溢れた店内がいつも以上にごっちゃごっちゃしていた。私に気づいたサムさんが商品の山からひょっこりと顔を出す。

「ヘイ小鬼ちゃん!待ってたぜ。とりあえず商品のホコリ払いと、窓拭きと床履き!よろしくぅ!」
「…ここの?」
「そ!コ・コ・の」

サムさんは在庫管理をしているのであろうか、バインダーとペンを持っている。…その後ろにも商品の山、山、山。思わず顔が引きつった。これは、もしかしたらとても大変なことを引き受けてしまったのかもしれない。この商品の山を全部拭いて、多分倉庫に移して、床と壁が見えたら掃き掃除と拭き掃除…?正気か?

「小鬼ちゃん、はずむから」

素敵なウィンクと共に、手をお金マークにしたサムさんはにっこり笑う。

「…やるしかないのか」

私は寮服から運動着に魔法で着替え、腹を括った。




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