海寮 | ナノ



XIV



そして運命の三日目。
私は朝からフロイド・リーチにべったり張り付かれていた。物理的に。

休み時間も、昨日は教室の外からこちらを見ていただけだったが、今日は毎回のしかかられる。シュラウドとダイヤモンドは顔が引きつっていたし、私の目は死んでいた。

「ロックウェール、随分でかいコートだな」
「先生の好きな毛皮じゃなくて魚皮ですけどね」
「面白い冗談だ。リーチ、早く戻れ」

お昼休みも、そのあとの休み時間も、つきっきりだった。

これでいい。
私の今日の役割はフロイド・リーチを引き付けておくこと。



「ではこれにて本日の授業を終了する」

トレイン先生の言葉で、今日の授業が終了した。昨日みたいに飛び出したりせず、のんびりと片付けをしていると、教室の入り口からリーチがひょっこり顔を出した。

「今日は逃げねーの?」
「昨日全力出して疲れたから逃げない」
「えぇー!昨日のリベンジしたいのにぃ!!」
「シュラウドからゲームを借りたんだ、これで勝負しよう」

机からボードゲームを取り出す。

「Azulと言うんだって」
「アズール?」
「そう、アーシェングロットと同じ名前だな」

宮殿タイル装飾ゲーム。
赤・青・水色・黄・黒の五色のタイルをいかに上手く並べて高得点を叩き出すか、と言うゲーム。らしい。

えーっと、まずはタイル袋から四つずつタイルを取り出して、並べて…。二人だからタイル置き場は五つで…。

「珊瑚ちゃん」
「なんだ」
「今日約束の三日目だけど、小エビちゃんたち手伝わなくていいの?」

タイルを並べる手を止めて顔を上げると、リーチは不思議そうにそう尋ねる。

「…私の役目はお前を引き付けておくことだからな」
「ジェイドだけだったらあいつらが勝つと思ってんの?」
「そうは思ってない。一人は魔法が使えないし、残り二人と一匹は得意魔法を奪われてるイソギンチャクだ。どう考えてもお前の片割れが有利だよ」
「じゃあなんで?あのコロン取られるの嫌がってたじゃん」
「私一人でお前を足止めできてるだけで、だいぶあいつらの手助けになるだろ」
「…ふぅん、まああのオンボロ屋敷と珊瑚ちゃんのコロンが手に入れば、アズール喜ぶし、なんでもいいけど」
「じゃあ始めるぞ、時間つぶしだ」
「きょうみねえけど…珊瑚ちゃん楽しそうだし、やるかー」





「……」
「まった俺の勝ちぃ!!珊瑚ちゃん弱過ぎじゃね?」

結果は惨敗だった。
三回やって三回とも負けた。

「なんでこんなに失点タイルが溜まるんだ…!!」
「あは、俺自分の得点より、珊瑚ちゃんにいかにタイル押し付けるかしか考えてねーもん!」
「くっ…ちくしょう」

外を見れば、もうだいぶ陽が傾いていた。

「……もうすぐ期限か」

そう呟いていると、廊下が騒がしくなった。

「あ?なに??」
「…もしかして、」

「イソギンチャクが消えたぞーー!!!」
「俺のもだ!!!!」
「やった!これで俺たちは自由だ!!!」

二人で廊下を覗くと、元イソギンチャクたちの頭からイソギンチャクが消えていた。

「はぁ!?」
「キングスカラー、本当にやってくれたんだ…」
「どーゆーことだよ、それ!!!」
リーチは私を壁に叩きつけた。
「いッた、…キングスカラーと協力要請の取引をしたんだ」
「はあ?いつもトドみたいにダラダラ寝てばっかのあいつが、なんで協力なんかすんだよ!」
「おかげで私は一週間あの人のパシリだ」
「はあ!?それこそ意味わかんねえ!!アズールにコロン渡すよりあのトド野郎のパシリの方がいいってことじゃん!!」
「どんな取引しようと私の勝手だろ。とりあえず寮に行くぞ、契約書がなくなって他寮生から暴動が起きないとも限らない」
「あ?!珊瑚ちゃんって俺らの味方なの敵なのどっちなんだよ!!」
「あぁうるさい!私はあそこの副寮長だぞ!自分のことが解決したら寮の心配するに決まってるだろ!早く行くぞ!」
「珊瑚ちゃんの方がおせーじゃん!!」
「じゃあさっさと先に行け!!」
「おっせえから抱えるわ舌噛むなよ」
「うお!!!」




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