III
一週間後。
「では、これよりテストを返却する」
トレイン先生をはじめ、各先生からテストが返却された。教室内は皆、テストの点数の話題で盛り上がっている。
「リタくーん!!!見てよ!!実践魔法と魔法薬学!こんな良い点けーくん初めてとれたよ!」
「私も占星術で95点なんて取れるとは思わなかった。ローズハートに感謝だな。他の教科もなかなかがんばった」
私の手にある答案用紙はどれも高得点のものばかり、今回は上位10名とか狙えちゃうかもしれない。ローズハートに感謝だ。
「ろ、ロックウェール氏、魔法薬学満点だったね、」
「魔法史も満点だった。最後のひっかけ問題はローズハートにおすすめの文献を教えられていなければ絶対にとれなかったな」
「うわー満点の話かー、リドルくんもリタくんもすごいねぇ」
「でもその二つだけだ。他はニアミスが多かったから、」
「いやいや十分だって」
「勉強できるやつって、静かにマウント取ってくるよな…」
「……あの寮で副寮長なんぞやってたらこうなる」
「「あぁ、なるほど」」
二人は哀れんだ目で見てきた。
「ねーねー廊下に貼り出された上位50名、見に行かない?」
「今絶対混んでるから行かない。廊下塞がるから、帰るに帰れないし」
「それな、人が多すぎてゴミ…」
「二人ともノリわるいなぁー」
無駄口を叩きながら廊下の人数が減るのを待っていると、廊下から学生たちの叫び声が聞こえた。
「え!?なになに!?」
「うわぁ!きゅ、急に叫ばないで欲しい…」
「…なんだ?」
そしてそれはこの教室の学生からも聞こえ、叫んだそいつの頭に、
イソギンチャクが生えた。
「…あ」
周りを見れば、その場にいた我がオクタヴィネルの寮生以外ほとんどの学生が頭からイソギンチャクを生やしていた。
「…うわぁ」
やがてそいつらはイソギンチャクに引っ張られる様に、教室から出て行った。廊下も先ほどの人だかりが嘘のように静かになった。
…あのイソギンチャクは、ものすごく見覚えがある。寮内で規則違反をした寮生がモストロラウンジでタダ働きさせられている時に生やしていた。あぁ、またやったのか。
「…活発に商売をしてるって聞いてたけど、今回は随分商売したんだな…」
「アズール氏またえっぐい契約吹っかけたんだろうな…」
「ていうか三年であのアズールくんと契約する奴いたんだ…」
静かになった教室でアーシェングロットと契約をしなかった私たち三人の声が響いた。近くにいたオクタヴィネル生は静かに頷いていた。
「今寮に戻ると、イソギンチャクで溢れてそうだな…」
「じゃあハーツラビュル来る?このあとリドルくんたちとお茶会するんだ。トレイくんのケーキが出るよ」
「ローズハートにお礼を言いたいけれど、鏡舎が混んでそうだからまた今度にする」
「えぇー!!!」
「じゃ、じゃあボードゲーム部に、」
シュラウドが控えめに発言する。
「…いこうかな」
「え!まじでか!!!」
「教えてもらったゲーム行き詰まってるし」
「え!!あれやってくれたんですかな!?え!フレンド!フレコ教えて!」
「え、あぁうん」
ダイヤモンドとは今度絶対お茶会きてね!!と言われ、別れた。
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