海寮 | ナノ



VIII



大会当日になった。

私はあの日以来、なぜか一歩も寮から出ることなく過ごしてた。
体力育成と飛行術はもともと見学の予定だったが、それ以外の講義もシュラウドの用意してくれたパッド型アバターで授業を自室で受けていた。このアバターはとても優秀で、指名されたらちゃんと答えることもできるし、魔法薬学では半立体のホログラムアバターになり、道具を持ったり材料を切ったりすることができた。自分用の試作だったそうだが、ボードゲームで負けた代償にアーシェングロットから巻き上げられたらしい。本当にすまない。

私は松葉杖生活するつもりだったが、こちらをご覧くださいといい笑顔で言われ、ついでにリモート向きの細々としたマジフト大会の仕事を押し付けられれば、もう反論する気も起きなかった。画面越しにシュラウドにそう愚痴れば、やつは苦笑いをして、おすすめのオンラインゲームを教えてきた。チュートリアルはやった。

私の管轄となった救護本部は、まだ試合が始まっていないので怪我人もなく、とても穏やかだ。試合が始まればある種戦場となるので、私もお世話になった保険医の先生は今から特製のエナジードリンクを飲んでいる。
私も久しぶりの日光を全身に浴び、完治した足首を軽く捻り、体をほぐす。リモートで少し、いや、かなり体がなまってしまった。

そろそろ、プログラムが動き出す。
担当の学生に少し席を外すと告げて、事前に調べた選手入場の様子が全て見渡せる場所へと移動した。




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