II
生意気な魔獣を連れた一年が聞き込みにきたという人たちを含め、当事者十人と周りにいた人達に話を聞いた。全員が、いつの間にか倒れてただの、いつの間にか鍋を掴んでいただの、どうにも発言がパッとしない。近くにいた人たちも本人の不注意にしか見えなかったという。困った。
「他に近くで見ていた人は知らないか?」
「そうだなぁ…あ、サバナクロー生が近くでたむろしてたかも」
「こっち見てたかはわからないけどな」
「いや、情報感謝する。聞いてみるよ」
サバナの二年生だったかもとの話を聞いて、学園長に借りた学生一覧表を眺める。他の証言者も近くにサバナ生がいたかも言ってた。そちらは三年生らしいから、ちょうどいい、あとでまとめて寮にでも聞き込みに行こう。
他の事故の状況としては、場所が一定でないことが挙げられる。教室、実験室、階段、運動場…学園内の至る所で事故は起きている。共通点は被害者がマジフト選抜選手候補、ということだけ。うーん、やはりたまたま被害者の境遇が似ただけの、事故なのか…?
犯人は現場に戻るというし、事故現場も調べてみよう。
事故のあった教室も運動場も、いったって普通で、おかしな点は見当たらなかった。今は学校に数ある階段の一つに来てるが、特に何も無い。普通の階段だ。
あ、下の踊り場にいるあのサバナ生は、証言者が言っていた子か?寮に行く手間が省けてちょうどよかった。聞いてみよう。
階段を下りながら、途中で声をかける。
「そこのサバナクロー生、
「っうわぁっ!?」
「リドル!危ないっ!」
「え?」
切羽詰まった声が聞こえ、上を見上げれば、大きな、影。
「ッ!!」
「…ぁ」
上から降ってきたクローバーと目があった。
その次の瞬間には、
一緒に階段を転げ落ちていた。
「っぁ…!」
「ッ!...ろ、ロックウェール!大丈夫か!?」
「トレイ!大丈夫かい!?」
いたい。
「俺は大丈夫だ。ロックウェールが、」
「ロックウェール先輩!?」
体が、重い。
「頭を強く打ってるかもしれない…。ロックウェール、俺がわかるか?」
「トレイ!先輩から血がっ!」
からだが、うごかない。
「…頭が切れてるな…、リドル!保健室に運ぶから、先に行って先生に状況を伝えてくれ!!」
「わかった!トレイ、君は大丈夫なのか?」
「俺は大丈夫だ。ロックウェールを押し潰したからな…」
なにか、いっている。
少しだけ体が浮いたような感覚がした。
そして、
めのまえがまっくらになった。
← top →