ナイフ | ナノ


VII



無事寿司を届けたら、おせぇよとナイフを投げられた。避けられるスピードだったからどうやら機嫌を損ねたわけではないらしい。

そして今夜、嵐の指輪争奪戦だ。

脱落者以外の幹部が会場に向かう中、ザンザスは一人夕食をとっていた。今日は和風のステーキ。お気にめした様で黙々と食べている。私もお腹すいた。いつも食事は幹部の食事後に一般隊員と貰っている。いかに気配を絶つかが勝負の分け目だ。

「犬」
「はい」
「どうだ、久々の日本は」
「どうとおっしゃられても、のどかだなあとしか」
「お前の世界と変わりねぇか」
「それは、はい。全く変わりないです」
「だがてめぇの世界じゃねぇんだろ。いろいろ嗅ぎ回ったみてぇだな」
「…ただの空間移動ならまだ信憑性ありますから」
「もしてめぇの居場所があったとしてだ、戻りてぇか」
「…今日は随分機嫌が宜しいんですね」
「二度は言わねぇ」
「…戻りたいですよ、死ぬ危険のない世界なんですから」
「ハッ!馬鹿正直だな」

机に足を投げ出して、ウィスキーを一気飲み。飛んできた空瓶を避ければ、ぎらりと光った紅眼と目が合った。

「てめぇを拾ったのは気まぐれだ。訳のわからねぇもん持った表が居たから拾った。だが、すぐに死ぬと思ってたら意外としぶとく生きてやがる」
「…何を、おっしゃりたいんですか、」

「てめぇは、戻れねぇ」

「…………」
「ヴァリアーを、ボンゴレを、知り過ぎた。てめぇが戻る時は、死ぬときだ」
「…殺されるならザンザス様がいいですね。日本は火葬ですから」
「まだ殺さねぇ」

どこから取り出したのか、数枚の書類が机に置かれる。手にとってパラ見すると、一番最後にあのゴーラ=モスカの設計図があった。やっぱり機械なんだ、とか新たな発見に感動しつつも、書いてある内容に手が震えた。

「てめぇに任務だ。やれ、出来なきゃ殺す」
「…………」

"ゴーラ=モスカを暴走させ、9代目を殺害させよ"

「てめぇが縋ってる最後の良心だ。出来ないなら、今此処でかっ消えろ」
「…………」

流石は超直感と言ったところだろうか。人の嫌なところをついて来る。つーか意外と使えたからどうせなら殺しもさせとくかみたいなノリだろ。この人。今まで直接殺しを見たことはあるが、手を出したことはない。間接的にも直接的にも。

怖い。そう言わなかったら嘘になる。表と裏の絶対的な境界線、それが殺しだと思う。これをしたら戻れない。元の世界に戻れたとしても、戻れない。これでも手加減されているんだろう、それはわかる。だって間接的だ。これを見れば手をくだすのは10代目候補の沢田綱吉。私じゃない。…大丈夫、私じゃない。この先ここで生きてたらいずれ直接的もやらされる。間接的くらい、大丈夫。

「…やら、せて頂きます」
「下がれ」
「はい」

声が震えたのは御愛敬。

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