ナイフ | ナノ






「ありがとう」
「…お疲れ様でした、ッチ」

おい、聞こえてるぞ。その舌打ち。

地獄の教習からなんとか生還した三日目。担当した隊員がホントに私のことが嫌いだったみたいで大変だった。良く生きてたな自分。

久しぶりに執務室に入れば、溜まっている書類達。あぁ整理しろと、はいわかりました。中には幹部のベルフェゴールが無闇に地元の殺し屋を殺したとかで苦情の書類がちらほら。またやったのかあの王子。ご当地殺し屋狩りは最早名物だな。

私が引きこもっていたこの三日で指輪争奪戦が開戦されたそうだ。どうやら一晩一つの指輪を賭けて戦うみたい。…あれ。ということは指輪は全部で七つだから七日間かかるじゃん。…三日とか嘘じゃねーか。

一回目の晴の指輪、ルッスーリアは負けたらしい。おぉ少年達意外と頑張ってる。ルッスーリアは制裁を受けたのだろうか。受けたら死んでるか。

二回目の雷の指輪、レビィは勝ったらしい。くっそ、負ければよかったのに。こいつの死体処理なら喜んでやるわ。でも聞いた話、相手は五歳児だったとか。なんで五歳児が戦うんだよ。まあ赤ん坊も戦うから普通なのか。

そして今日がその三回目。嵐の指輪争奪戦。ベルフェゴールか。あの王子所為で増える仕事が結構あるんだよな。

「おいワンコー」
「これはベルフェゴール様、如何様で」

噂をすれば影とはこの事だな。腹減ったから寿司買ってこいってさ。二万円握らされた。隊服を身に纏い、屋敷を出る。

真っ黒い隊服はのどかすぎる日本の住宅街では浮いていた。まあ今の日本にはゴシック系とかあるし大丈夫だろう。それにしても約一ヶ月ぶりの日本だ。至るとこから日本語が聞こえるこの安心感。ああ良いね。

でもここは私の世界じゃないらしい。こんなに似ている、いや、同じなのに、全く違うこの世界。確かにマフィアだの指輪争奪戦だの、知らないことばかり。まあただの高校生だったから知らないだけか。

「つーか寿司屋どこだよ」

しまったー日本だからって無駄に安心してた、土地わかんね。まずい、まずいぞ。頼まれたのはベルフェゴールだ。死ぬ。まずい死ぬぞ。頼まれた時間は約一時。最低でも二時には届けなければ殺される。私の中の嫌な殺され方第二位だ。ちなみにぶっちぎりの第一位はレビィだ。だって傘で殺されるんだよ、間抜けじゃない?絶対やだ。

仕方ない。こうなったらタクシー捕まえて寿司屋に向かおう。

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