ナイフ | ナノ


子守狼5



だから私は一般人だと、何度言えばわかるのか。

西門から侵入した敵を相手しながらそう思う。個々の力はたいしたことないが、何てったって数が多い。スクアーロやザンザスだったら一瞬で消し去れるレベルだろうが…私は違う。

「爆破!」

カラス達を突っ込ませ、爆発から逃れた敵をナイフで倒す。それでも煙の奥からぞろぞろと…キリがない。炎は尽きかけ、体中は血まみれだ。もちろん、返り血なんかではなく私の血だ。

「爆破ッ!!」

通信機から完了したとの声はまだ聞こえない。

まだか、まだか。

私が死にそうだ。

『ゆき様!!総員退避完了しました!!!!』
「爆破ッ!!」

耳に響くその言葉と共にそう叫び、戦闘から離脱する。出血による貧血と戦闘続きによる疲労で激しい頭痛に見舞われながら抜け道のある地下室へ駆けた。


カラス達で足止めをし、廊下を駆ける。
もうすぐ地下室、いつもの廊下がとても長く感じた。そして、そんな満身創痍の私に追い打ちをかけるよう、一本の通信が入った。

『真鶴ゆき』

聞いたことのないダミ声。足が止まり、通信機に手を添える。

「何者だ?」
『死に損ないに言う必要があるのか?』
「.........」
『君の愛しいペットに会いたいのなら、王の部屋へ来ることだ』
「...王の部屋?」
『早く来ないと可愛いペットが死ぬぞ』
『ゆき!』
「! ルカ!」

一方的に切られた通信機からツーツーと機会音が響く。舌打ちを一つして、私は踵を返し駆け出した。



貧血でフラフラしながら着いたのは、ザンザスの執務室。中にある気配を確認して、ノックせずに入った。

「ゆき!」

目の前には傷だらけで目に涙を溜めたルカと、そのルカに拳銃を突きつけている背の高い男がいた。周りにはルカを預けた使用人と隊員の死体が転がっていた。全員得物を持ち、戦ったことが伺える。更に私がルカを直接預けた使用人のメイドは、左腕と胴の間に不自然な空間がある。...ルカを抱えて戦っていたのだろう。

私は瞼を少し閉じ、そして改めて目の前の男を見た。

「年端もいかない子供に死体を見せるなんて...教育上良くないのでやめて下さい」
「はっ、おかしなことを言う。暗殺部隊にいる子供がただの子供か?」
「ただの子供ですよ」
「ふん、そんなわけないだろ。いずれ脅威になるなら、今ここで殺しておくのが得策だ」

男はさらに拳銃をルカの頭に食い込ませる。ルカの溜まった涙がボロボロと流れ落ちた。私はいつもより穏やかな口調で男に話しかけた。

「...目的はなんですか?」
「決まっているだろう。貴様らヴァリアーへの復讐だ」
「...復讐ですか。ですが、今幹部は出払っています。それをわかっていての襲撃ですよね?」
「ああ。俺たちの目的は、お前だ。真鶴ゆき」
「.........」




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