ナイフ | ナノ


女子会だよ3



そして三日目。
私が捕まえた鼠から、バックのファミリーを絞り出したヴァリアーはそのファミリーを壊滅させた。反ボンゴレの中小マフィアだったらしい。本部に伝えないで自分達で動いちゃう辺り、流石は荒くれ者の暗殺集団だ。

旅行の最終日、昨日の鼠も元を叩いたから二人はもう安全。…とかそんな訳無い。

「…ぐっ、」
「くそ、」

気配だだ漏れの下っ端達。私でも倒せるってどういうことよ。路地裏にぽーいっと捨てて、昨日から借りているルッスーリアの部下に回収させる。

「あとはよろしくお願いします」
「はっ!」

…見るからに体術に特化してます的な風貌の隊員。…勝てないかな、匣なら勝てそう。

そんなこと考えてたら、耳にはめた通信機に連絡が入った。

「はい」
『、ゆき、様』

…? 何やら様子がおかしい。

「どうしましたか?」
『…対象が、ぐあ!!』

そしてブツッと通信が切れた。

「ゆき様?」

声掛けを無視して気配を探る。先程の通信は昨日から二人につけていたルッスーリアの部下からだ。

「…ルッスーリア様に連絡してください」
「! はっ!!」

壊滅させたと聞いたから、多少気が緩んでたのかもしれない。駆けるように移動する二つの気配を追うように走り出した。





走って、走って、そして、見つけた。

大人数の男達に追い詰められた二人の女性。薄暗い倉庫のような、いかにも人目はありませんという場所。さっきの下っ端達は恐らく囮だろう、私を引き離して二人から目を逸らす為の。

パアンッという銃声と同時に飛び出して、カンッと愛用のナイフで銃弾を弾いた。

「ゆき、さん…」

「ご無事ですか?お二人とも」

ナイフを構え、男達を見据えながらそう尋ねた。震えながらも力強く帰ってくる返事、どうやら意識はしっかりしているらしい。

「…貴様は、情報に入っていたヴァリアーの護衛か」
「貴方達は、ウチが壊滅させたファミリーの、残党ですかね」

"残党"
その言葉と同時に、男達は殺気立った。アタリらしい。

「…貴様、状況がわからないらしいな」
「わかっていないのは貴方達の方ですよ。天下のボンゴレに喧嘩を売って、これ以上仲間を減らしたいんですか?」
「…なんだと、?」

あからさまな挑発をすれば、やすやすと乗ってくる。

「…人質は後ろの二人が居れば十分だ」

リーダー格の男の言葉と共に、後ろの男達の殺気がピークに達する。…あーあ、さっさと一斉に攻撃していれば私なんてあっという間に殺せただろうに。

「やれ!」

それと同時に男達が、私に向かって駆け出した。

「「「うおおおおお!!!!!!」」」
「「きゃあああああ!!!!」」

旧時代の戦い方じゃ、私には勝てないよ。

指輪に炎を燈し、開匣。増殖したカラス達が男達に特攻した。

「なっ!!」

リーダー格以外を吹き飛ばし、残りは後ろの二人を守るように壁を張る。隙の出来たリーダーに、雲の炎を纏ったナイフを振りかぶった。

「…くっ!」
「!」

紙一重で避けられ、銃弾が私目掛けて飛んでくる。すかさず避けて、カラスを特攻させた。

「…爆破」

カラス達は一斉に爆発。気を失ったであろう男はバタリと地に倒れた。

「ゆきさん、」

クロをしまうと二人は不安そうに私を呼んだ。

「もう、大丈夫ですよ。ですが、私の力不足でお二人を危険な目に合わせてしまって…本当に申し訳ありません。今、ウチの車を用意しますので、それで沢田殿のところまでお送りします」
「ゆきさん!」

早口でそう言って、連絡しようとしたら笹川京子に止められた。

「笹川殿、」
「あの、ほっぺに怪我がっ…!」
「ああ」

頬を触れば、いつもザンザスにつけられる様な傷があった。先程の銃弾だろう、避けきれていなかったらしい。

「このくらいは、まあ、いつものことですし」

手に晴の炎を燈して、患部を治療する。

「もう、治りましたから」

事務的にそう言えば、今度は三浦ハルが私の手をとった。

「み、三浦殿」
「ダメです!治っても、女の子が顔に怪我しちゃダメです!!」
「しかし、」
「そうだよ!私達を守って怪我しちゃダメ!!」

今まで二人のホワホワしたところしか見たことのない私は、この剣幕に思わず後退ってしまった。

「だいたい!途中で居なくなっちゃダメですよ!!今日も美味しいスイーツいっぱい食べたんですから!!」
「ゆきさんも居ないとつまらないんだよ!?」

「え、っと、」

…これは一体どういうことか。

「あの、怖くないんですか?私が、」

恐る恐るそう聞くと、二人はバッと顔をあげた。

「自分達を守ってくれてる人を怖がる訳無いよ!」
「そうです!!」

「で、ですが…昨日は、」

「…あれは、ハル達は自己嫌悪してたんです」

…自己、嫌悪…?

「何も知らされないで、ただ守られて…それは私達が弱いから」
「情けないじゃないですか!自分達が行きたいって言ったのに…ただ守られてるだけなんですよ!?」

二人は力強く私を見る。その瞳は、まるで彼の様に透き通っていた。

「一昨日も、昨日も、今日も」
「助けてくれてありがとうございました!!」

「!」

二人はにっこりと笑い、私の手を優しく包む。

そうか、私はもう…自分以外も守れるようになったのか。

己の身を守る為だけに特化した暗殺技術。でも、こういうのも…たまにはいいかもしれない。

スクアーロの言っていた"息抜き"の意味が、ようやくわかった気がした。



Fin.

top


×
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -