ナイフ | ナノ


女子会だよ!



よく晴れた日のこと。
イタリアのボンゴレファミリー本部はちょっとした騒ぎが起こっていた。

「え、二人だけでフランス観光?」

「はいです!来週は月に一度のケーキデーです」
「イタリアにきてしばらく経つけど、そういえばケーキの本場、フランスが近いのに行ってないなーと思って」
「だから京子ちゃんと今月のケーキデーに合わせて観光しよう!って話しになったんです」

「え、取り寄せとかじゃダメなの?」

「本場ですよ!ツナさん!!」
「そうだよツナ君!本場だよ?」

「じ、じゃあ俺達ついて行っちゃダメなの?」

「たまには女子会したいよねー」
「ねー」

「な、なら、ビアンキとかイーピンとか、」

「二人とも誘ったんだけど…」
「ビアンキさんはお仕事で、イーピンちゃんは修業が入ってるそうです」
「髑髏ちゃんも誘ったけど無理で…二泊三日の観光を急に決めちゃったからね」

「二泊三日!?」

「うん、もうホテルも取っちゃったの」
「ツナさん、お土産は何が良いですか?」

「いや、あのね二人とも。さすがに二人だけって言うのは…お兄さんを護衛にとか、」

「んー…女子会だからねーちょっとお兄ちゃんは、」
「はい、護衛は不要ですよツナさん!」
「みんなお仕事忙しいだろうし、ひっそり二人で行ってくるから心配しないで」
「何かあった連絡しますから!」
「じゃあツナ君、お土産楽しみにしててね!」

「…あ!ちょっと二人とも!?」

楽しそうに二人で語らう背中に彼の言葉は届く筈もなく…最強のイタリアンマフィア、ボンゴレファミリー10代目は頭を抱えた。




「こんにちは、ゆきさん」
「…10代目、アポはとりましたか?」
「ちょっと急用で」

よく晴れた日の午後。
ボンゴレ10代目が獄寺と笹川を引き連れ、ヴァリアー本部にやって来た。

「ザンザス様は今日不在ですが、」
「いや、ゆきさんに用があったというか」
「? まあこちらへどうぞ」

応接室へ案内して、途中ですれ違った使用人にお茶の用意をさせる。

「…随分静かだな」
「こんな真昼間から起きてるのは私くらいですよ」
「あぁ?幹部の奴らは寝てんのか?」
「ベルフェゴール様、レビィ様は任務で不在。スクアーロ様とルッスーリア様は就寝中、マーモン様とフラン様は個人的な用事で不在です」
「ザンザスの野郎は?」
「ザンザス様は…まあ、不在です」

9代目にどうしても参加しないといけない食事会に呼ばれてバカンス中。と言っても、本人からしたら嫌な休みだろうけど。しばらく機嫌悪いだろうな。

「あぁ?」
「ははは…」

超直感で何かを感じ取ったらしい10代目は苦笑い。

「こちらへどうぞ」

応接室につき、10代目一行をソファーへ促した。

「それで、私に用とは、」
「あぁそれは、」

「極限に京子達の護衛をしてくれッ!!!!」

「さ、笹川殿…」

今まで沈黙していた笹川了平がいきなり拳をあげて立ち上がった。

「お、お兄さん…」
「うるせぇぞ芝生頭!!」

「あの、つまりどういうことでしょう?」


かくかくしかじか。


「というわけなんだ」
「…まあ事情はわかりましたが、」

「頼む真鶴!!」

「護衛はいらないと言っているんでしょう?それにミルフィオーレだって壊滅、残党狩りはウチで済ませましたし、今は比較的安全だと思いますが」

「極限に甘いぞ真鶴!!」

「…………」

うるせぇよ。

「でも二人ともボンゴレの重要人物としてマークされてるから…」
「…それはわかりますが、今はザンザス様不在ですし、勝手に任務を受けるのは、」

しかもヴァリアーを三日も離れるとか…個人で判断出来る範囲を超えてる。

「ですから、」

「良いじゃねぇかぁ…行ってこい」

反論したと同時に荒々しくドアが開く。…こいつ、気配消してたな。

「スクアーロ!」

「…これはスクアーロ様、お目覚めですか」
「あ゙ぁ」

スクアーロはドカッと私の隣に腰掛けた。

「たかが女二人の護衛だろ?良いじゃねぇか、息抜きついでに行ってこい」
「…息抜き、と言われても…任務ですし。それに三日ですよ?」
「軽い任務で借りを作るのは悪くねぇ」

なるほど、借りですか。

「大体うちの幹部を貸すんだぁ…それなりの金は出してもらうぜぇ?」

「それは、うん。任せてよ」

「決まりだな。ゆき、カスボスには俺から言っておいてやる」
「…激しく不安なんですが、」
「うるせぇ任務だ!さっさと行けぇ!!」
「…畏まりました」

不満が顔に出ないようそう言えば、10代目は嬉しそうに笑い、笹川了平に至ってはガッツポーズをする。

「ありがとう!ゆきさん!」
「極限に任せるぞ真鶴!!」

「…はい、お任せください」

ため息を押し殺して私は深々と頭を下げた。

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