ナイフ | ナノ


恋愛事情



「ってことなんだけど」
「…人の心配する前にさっさと京子殿に告白しては如何ですか」
「うっ…厳しいね、ゆきさん」

ははは…と少し困った様に笑うボンゴレファミリー10代目。私は隠すこともせずにため息をついた。

今日はヴァリアーの活動報告書なるモノを提出しに本部へやってきた。郵送にしようと思ったが、このあと予定は何もないし、帰りに繁華街をぶらぶらでもしようかとわざわざ届けに来た。今はおとなしく郵送か、一般隊員に届けさせればよかったと後悔してる。

何故10代目と優雅にお茶をしているのか。引き止められて、ザンザスに連絡も入れられてるというこの始末。同じボンゴレとは言え、完全にアウェーなこの空間で気は休まるはずもない。

しかも開口一番に出て来た言葉は、『結婚しないの?』だった。思わず顔をしかめた。

『ほら、ゆきさんもいい年だし…境遇が境遇で普通の生活なんて出来ないけど、せめて恋愛とか、女の子としての幸せを味わってほしくて』
『……………………………』
『ってことなんだけど』

冒頭に戻る。

「大体ハル殿へ対応も曖昧なものではありませんか」
「…うん」

笹川京子と三浦ハルはこの10年で出来た女友達だ。10代目の関係者ということで狙われやすい彼女達のボディーガードを一度任務で引き受け、それ以来たまに遊びに誘われる様になった。仲は良いと思う。

「ま、まあ俺はいいからさ!」

あ、流した。

「ゆきさんの好きな人とか、」
「…あの職場で出来るわけないじゃないですか」
「いや、そう言わずに。ザンザスとはどうなの?」
「ザンザス様?」

…いや、あの人はただの上司だし。今は違うと思うけど初、めは使える犬程度しか思ってなかったと思うな。

「いや、犬はないでしょ」
「ありますよ」

つかザンザスと結婚?

…DV激しいただの亭主関白じゃないか。意外と優しいところはあるけど、幸せな家庭とか想像がつかない。

「じ、じゃあスクアーロとか、」
「…スクアーロ様?」

…幹部の中で一番の常識人だけど、恋愛?結婚?叫び声煩いしなぁ…。

「…ならベルフェゴール」
「ベルフェゴール様、」

まず身分差とかでゴチャゴチャと。わがままだし自分勝手だし。

「…フラン」

毒舌ハンパないし、カエルだし。

「…ルッスーリア」

あの人は心乙女だし。死体愛好家だし。

「…マーモン」

身体的年齢差が酷いし、守銭奴だし。

「レビィ」
「却下」

あれはない。うん。ない。第一嫌われてるし。私も好きじゃないし。

「…というか超直感いいように使うね…ザンザスの時もそんな感じ?」
「大体は、まあ…そうですね」

しれっとそう言えば、10代目は苦笑い。私だって伊達にあそこで生きてない。

「じゃあ…うちの恭弥とか、」
「雲雀殿ですか」
「ほら、良く屋敷に呼ばれてるし」
「同じ雲の幹部ですからね、交流はありますが」

そもそもあの人、群れるの嫌いじゃん。

「………そうだね」

10代目はため息をついた。ほら、人の心配なんてするから余計な精神的疲労が出るんだよ。それに、そんなお節介されても私好きな人居るし。

「え!誰!?」
「貴方ですよ」
「え…」

うそぴょーん。

「んなー!?」
「……ははは」

久しぶりに慌てる沢田綱吉を見た気がする。超直感で遊ぶのもたまには悪くない。

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