XII
頭を鈍器で殴られた様な衝撃を受けた。まさに存在を否定された様な。下ではザンザス以外が騒いでる。でも同時に笑ってしまう。
ここに居る誰より、私は異端だと。
「ゆきさん…」
ユニが不安そうに私を呼んだ。
パラレルワールドから来たわけではない。じゃあ私は一体どこから来たんだ。同じ世界のようで、全く違う世界…それがパラレルワールドだろう。私だって、限りなく似た世界から飛んできた。でも、パラレルワールドを統一した白蘭でさえ…私を知らない。そんなの、もう笑うしかない。
「君は、何者なの?」
「……………」
大きく息を吸い、ゆっくりとはく。
「私が何者であるかなんて、そんなの貴方に関係ないですよ」
「あるよ。僕はパラレルワールドを統べたんだ。つまり、この世界は僕の世界なんだよ?そこに、ルーツ不明の存在なんて…気味悪いじゃない」
…くそ。なんてわざとらしい言葉選びだ。わかっていることなのに傷ついてる自分が嫌になる。
「でもね、僕は一つの仮説を立てたんだ」
「仮説…?」
「そう!君が、僕と同類であること」
思わず息を飲んだ。
「今から10年前、君はザンザス君に拾われヴァリアーに入った。入る前は人身売買にかけられ、各地を転々とした…これが君に関する情報」
「…………」
「…でも、不可解なのは人身売買の組織の情報が何もないこと。ボンゴレが潰したとしても、その潰した形跡が残るはず…でもそれすらない」
白蘭はまるで歌う様に話す。
「だから僕は一つ仮説を立てた。僕と同類…つまり、君が世界を越えてここに来たとしたら?しかも、"僕が居ない"世界から。そうすると驚くくらいしっくりするんだよ」
…白蘭の居ない世界から?
「君に関する情報が何もないことや、弱い君がザンザス君のそばにいること…例え弱くても、世界を越えたなんて奇特な人間を、やすやすと手放す必要なんてないからね。どうかな?」
「……………………」
いや、どうかな?とか言われても。
いきなり緊張感なしに言うが、ザンザスが私をそういう目で見ていたら私はあっという間ににバラバラであの世だ。現に、私に口止めしたのは他でもないザンザス本人だし。あの時のあの人は私をいつでも殺せるただ使い勝手の良い雑用係にしか思ってなかった。…今は、違うと思うけど。
でも、そここそは違ったが…他は合ってるのが恐ろしい。
「…まるで、見ていたようですね」
私がそう言えば、白蘭は更に笑みを深くする。
「…ゆきさん、」
「じゃあ、君が来た世界があるわけだ」
「あるでしょうね。貴方のものだというパラレルワールドに私が居なかったんですから」
半ば自棄に、吐き捨てるように言って、腰からナイフを取り出した。
「…あれ?君って、非戦闘員じゃなかったけ?」
「…………」
「ナイフなんて構えて、どうしたの?」
「殺気、漏れてますよ」
あの目が嫌いだった。笑ってるのに笑ってないあの目が。目が合う度、悪寒が走る。
もう、私は用済みなんだろう。それこそ、別世界の住人だからとバラバラにされてあの世行きだ。…スカウト?ザンザスと一緒なら考えてもいいが、あの人が首を縦に振るはずないから却下で。
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