ナイフ | ナノ


VIII



「突撃」

入り口から飛び出た影に、カラス達が特攻する。手応えは、ない。

「…バーロー、きかねえよ!」

一掃されるカラス達。…でも溶けてはいない。吹き飛ばされただけか。

「ユニ様はどこだ」
「ここではないどこか、とだけ」
「死にてぇらしいな」

つっこんでくるザクロをカラス達でガード。増やしといて良かった。

「!」

と思ったのもつかの間で、またしても吹き飛ばされる。イースを開匣し、空を飛ぶ。私は時間を稼げば良い。グルグルと旋回し、カラス達を特攻させ、吹き飛ばされるの繰り返し…炎がもう切れそうだ。もう少し頑張れ、私の炎。

「遊びは終わりだバーロー」
「なっ…」

とか考えてたらいきなり横に現れて地面にたたきつけられた。

「くっ…」

とっさにカラス達をクッションにしたものの、殴られた衝撃がやばい。直ぐに立ち上がろうとしたが、馬乗りされ、腹を圧迫される。

「…ぐっ、ぁ、」
「ユニ様はどこだ」
「…さあ、知り…ません、ね」

痛い。痛い。何本か折れた。圧迫されて、内蔵が破裂しそう。体内時計で約5分…スクアーロよりは短いが、頑張った方だろう。

「…てめぇ、真鶴ゆきだろ」

…?なんで私の名前が、

「ユニ様も連れ戻さなきゃならねぇが、お前も生かして白蘭様の元に連れてかなきゃなんねぇ…」

…白蘭が?なんで、どうして。

「あー面倒だが、お前だけでも連れて戻るか」
「ぐ……ぁ…」

駄目押しとばかりに腹を圧迫。気絶させたいのだろう。…それにしても、よいことを聞いた。相手は私を殺せない。それはとてもよいことだ。

朦朧とする意識の中、ばれない様にポケットに手を入れる。ガス欠間際でなけなしの炎を絞りだし、目当ての匣を探す。指が当たった。

「…ザクロ、」
「まだ気絶してねえのか」
「私の、勝ちですよ」
「バーロー…何言ってやがん、

開匣。
ポケットから雲の炎が爆発的に漏れだし、ザクロを吹っ飛ばした。油断していてくれて助かった。

『…雲雀殿、この匣は、』
『君、あのオカマに炎わけて貰ってるんだって?相変わらず弱いからね。僕からもおすそ分け』
『では中身は、』
『僕の炎が入ってる。ガス欠も早いんでしょう?君に死なれると困るんだ。他の伝達役だと煩くなりそうで』
『…………』
『それで少しはパワーアップ出来るんじゃない?』

あの時に貰ったものはもう使って、空になった匣は返してあった。これはそれにまた炎を入れたものだろう。…どれだけ伝達役が他の幹部になるのが嫌なんだ。

「…クロ、防壁を…!」

もの凄いスピードで増殖していくカラス達。突撃してもパワーが違う。相変わらず凄い炎だ。パチンと指を鳴らせば、爆発。普段の時と桁違いの力を発揮する。

「くそ!さっきみてえに破れねえ!!」

当然だろ、炎の純度が違う。私みたいにパチモンじゃない。

ザクロを追い詰め、カラス達は丸くなり、やがて…球になる。球針体…それのカラス版の出来上がりだ。…これでしばらくは出てこれないだろう。

「…ゲホッ、コホッ!!」

…内蔵がやられたらしく、血を吐いた。ガス欠も近く、足がフラフラで…アジトの入り口へと向かい、瓦礫に埋もれているだろうスクアーロを探した。

「…スクアーロ様、」

気絶したスクアーロは意外と直ぐに見つかって、指輪に炎を燈す。開けるのはイースではなく、ルッスーリアから貰ったバッテリー用の匣だ。

暖かい黄色い炎が私を包む。イースを開け、治療を開始する。ルッスーリアの炎もなくなったころ、大きな手がまた私の頭を撫でた。

「上出来だぁ…」

その言葉を聞いた途端、私はガス欠で気絶した。

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