ナイフ | ナノ


学校へ行こう3



あの学校襲撃事件は、ボンゴレの総力全てを持って揉み消された。私とベルは共にイタリアに強制送還され、謹慎処分を受けた。一般人を巻き込んだのと、やり過ぎたのがあったが、一応正当防衛で大した処分にはならなかった。

が。

「…日本から来ました。真鶴ゆきです」
「王子のこと知らないとかモグリじゃね?」
「隣はベルフェゴール様です」

シュッ
カンッ

「ベルな」
「…ベル様です」

なんでマフィア養成学校に入れるかな。まあ前みたいに気を使う必要はないから良いけどさ。死亡率MAXじゃないか。

「…なんで切り裂き王子が」
「ヴァリアーの幹部だろ?」
「隣の女もか…」

すでに殺気だってるし。隣のベルは終始楽しそうだった。

授業はマフィアのことばかり。体育の授業も殺しあい…鬱になりそう。でもよかったことはここの生徒がヴァリアーの一般隊員より弱いことで、これなら攻撃受けても避けられる。

ヴァリアー邸に帰れば帰ったで今度はスクアーロとの修業。なんか変に乗り気で…私は毎日死んだように眠った。


「よ!」

授業に出てもマフィアの歴史とか試合とかだから適当にサボって街にいたら、人懐っこい笑みを浮かべた跳ね馬に会った。

「ディーノ殿」
「お前、真鶴ゆきだよな?争奪戦の時会ってるけど…話すのは初めてか。なんて呼べばいい?」
「お好きにどうぞ」
「じゃあゆきな!」

ニカッと笑って、あれよあれよと近くのカフェに連れ込まれた。紅茶が二つ用意され、美味しそうなスコーンも並んだ。

「へぇーじゃあゆきはザンザスの付き人なのか」
「…今は幹部の雑用係ですよ」
「あそこで生きてるだけでもすげーって」

未来の記憶を持っているらしい跳ね馬との会話はよく弾んだ。しかも、触れてほしくないところには触らないでくれる…この男、モテるな。

「そういえば、今学校だろ?サボりか?」
「…えぇまぁ」
「へぇ、意外とおてんばなのか」

…どこをどうしたらおてんばになるんだよ。

「学校に行きたくないんです」
「あー…あそこは特殊だしな。俺も何度も抜け出したよ」
「毎日マフィアのことを学んでも仕方ないと思うんですが…9代目と家光殿は何を考えているのか…」
「でも表の学校であんなことやっちゃな」
「好きでやったわけではありません。被害を最小限に食い止める努力はしましたし、後始末だって私が、」
「お、おい…」
「大体元はと言えばベル様がご当地殺し屋狩りなんてするから…いや、そもそも私一人で学校に行ってれば…」
「…ゆき?」
「だったら大元で学校に行けなんて命がなければ、」
「ゆき!」

跳ね馬はパンッと目の前で手を叩いた。

「大変だったんだな」
「デ、ディーノ殿…」

そしてぽんぽんと頭を撫でられた。未来の記憶…幹部全員に何故か撫でられたことがあったなと思い出した。

「あ、そうだ。卒業したら、ヴァリアーじゃなくてウチに来いよ!」
「え」
「キャバッローネ。そりゃあボンゴレより規模は小さいが、同盟組んでる中じゃ三本指には入るぜ。いい話だと思うけど?」
「いや、あの…」
「お前さえ良ければ9代目と話つけてすぐにでも、」
「ディーノ殿」

少し強めに名前を呼んだ。

「ん?」
「私はあそこが良いんです」
「!」
「未来の私も言っていましたが、どんなに命の危険があってももうあそこが私の居場所ですから」
「…でもよ、」
「それに、ディーノ殿は私に仕事くれなさそうですし」

多分キャバッローネに行ったら…この人は私のことを表の人間の様に扱うのだろう。この人自身の意志か、それとも9代目か家光か…。私の所為ではないとは言え、あれだけの事件を起こしたのに…まだ諦めていないのか。だったらマフィア養成学校なんて入れないでくれ。

「あー…俺の負けだ、なんか読まれてる気がするぜ」
「そうですか」
「いい案だと思ったけど、そんだけ意志が強いのか。じゃあ仕方ないな」

跳ね馬はニカッと笑った。

「でももしなんかあったら俺を頼れよ?もう他人じゃないし、息抜きも必要だろ」

そしてサッと伝票を持って立ち上がる。

「私も払いますよ」
「いいんだよ、俺が付き合わせたんだから」

そう言って足を踏み出すが…

「そっちには段差が、
「うわあッ!!!」
「……………」

踏み外してこけてしまった。…あぁそういえば聞いたことがある。跳ね馬ディーノは部下が居ないとへなちょこになるという究極のボス体質だと…。ボスってロクなのが居ないな。

「いってぇー…」
「大丈夫ですか?」
「あぁ…」

手を差し出せば、はにかみながら握りかえされる。グッと少し力を入れて立ち上がらせた。

「さっきはありがとうな、ゆき」
「いえ。紅茶ご馳走様でした」

そのあと跳ね馬を迎えに来たらしいロマーリオの運転でヴァリアー邸まで送ってもらった。




そして、時は経ち…一年後。
私は無事、と言っていいのかわからないが…マフィア養成学校を卒業した。

ささやかながらあった卒業式も、直ぐさま暴動が起きて即中止。隣に居たはずのベルはもうどこかへ消えた。…暴動に参加しに行ったのか。

朝礼や授業でも暴動は起きるが、今回は規模が違った。とにかくでかい。学校全体で火花が散っている。と、いうのも…

「卒業おめでとう、ゆきさん」
「首席だってなぁーすごいじゃねーか!」
「ありがとうございます。でもマフィア学校で首席でも、」
「あー…まぁな」

二人とも苦笑いをした。そうボンゴレ9代目とその門外顧問が来ているからだ。ついでに言えば、ザンザス含めたヴァリアー幹部も来ている。今はベル同様、暴動の鎮静に向かっているが、火に油を注いでいる気がしてならない。つーか全員参加って…暇なの?

私達の周りは屈強なボンゴレの部下達が囲んでいて、騒ぎは蚊帳の外の様。流石はボンゴレ9代目と言ったところか、警備が厳重だ。

とか思ってたら厳重なガードが割れていく。邪魔な護衛達を押し退けてやって来たのはザンザスだった。

「おい、老いぼれ」
「ザンザス、9代目に…」
「良いよ家光。少し、借りすぎたか」
「…行くぞ、ゆき」

ザンザスは短くそう言って、直ぐさま踵を返す。急いで追い掛けようとして、…ふと足を止めた。

「9代目、家光殿、本日はありがとうございました」
「ああ」
「気をつけてな」
「大丈夫ですよ、家に帰るだけですから」

少し笑いながらそういえば、家光は苦虫を噛み潰した様な表情をしたあとに困った様に笑った。

「…そうだな」
「またね、ゆきさん」

9代目に至っては終始穏やかだった。

警備のガードを抜ければ暴動の真っ只中。ザンザスはそんなの気にせずずかずかと進んでいく。周りもザンザスに道を開けた。

跳んで来るナイフやら銃弾やらを愛用のナイフで弾きながらザンザスのあとをついて行けば、続々と幹部達が集まっていく。マーモンはちょこんと私の頭の上に乗った。

最後にベルを回収して、暴動の学校を後にする。校門に用意されたリムジンに向かっている時、ベルが楽しそうに私に耳打ちした。

「今日パーティーだってさ」
「パーティーですか…珍しいですね。卒業祝いでしょうか?」
「ちげぇよバーカ、お前の幹部昇進だろ?」
「…え」

思わず立ち止まってしまったら、ベルはニィと笑みを深くする。

「うししっ!雲の幹部ー」
「え、それ本当で、
「ゔお゙おぉい!!早くしろぉ!!」
「うるせーよカスアーロ!」
「あ゙ぁ゙!?」

喧嘩腰の二人の間を通り、そそくさと助手席に乗り込んだ。

そしてヴァリアー邸ではベルの言う通りパーティーの様なモノが開かれた。が、相変わらずナイフやら火花やらが飛んでいる夕食…これではいつもの夕食となんら変わらない。思わず苦笑した。

飛んできたナイフを弾く。

マフィアの学校を卒業したこの日。私は雑用係から雲の幹部に昇格した。



fin.

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