ナイフ | ナノ


学校へ行こう2



それはのどか過ぎる昼過ぎに起こった。

パアンッ!

と校内に響き渡る銃声。聞き慣れてはいるが、学校には不似合いな音だ。続いてドタドタと足音が響き、全身黒服の男が銃を携えて教室に入って来た。

「なっなんだお前は!?」
「静かにしろッ!!」

そして、校内放送がかかる。

−−おいヴァリアー!!この高校にいることはわかってる!!人質は預かった…おとなしく体育館に来いッ!!仲間の敵だッ!!

「……………………」

思わず頭を抱えた。恐らくベルが暇潰しに殺した殺し屋の敵討ちだろう。だがしかし…

「…ヴァリアーってベルフェゴール?」
「敵って…」
「でも、ベル君…」

「……………………」

その肝心のベルが居ない。あちゃーと頭を抱えていると教室にいる男は天井に向けて銃を鳴らした。きゃあああと女子が声を上げる。

仕方ない、私は男を刺激しないように手を挙げた。

「あぁ?なんだ!」
「あの…ヴァリアーってベルフェゴールですよね、と、友達なので呼びますよ」

あくまで一般人を装って、声まで震わせて、ベルとの連絡にこじつけた。

静まり返った教室に、私の声が響く。

『なんだよゆき…今良いとこなんだけど』
「べ、ベル、あのさ、」
『ししし!何どもってんの?』

私だってこんな真似したくないわ。

「今、学校に銃を持った人が来てて…ベルを出せって、」
『…ふーん、なにそれ。ちょー面白そうじゃん!』

電話越しにザシュッと肉の切れた音がした。…この人、また殺ったのか…。

とか思ってたら近づいてきた男が私の携帯を奪った。

「おいヴァリアー!!早く来やがれ!!この女がどうなってもいいのか!!!」

…え。私ですか。まあ友達って言っちゃったし…。

するとかすかにベルの笑い声が携帯から聞こえてきた。

『うしししし!やれるもんなら殺ってみろよ!』
「なんだとッ…!!」
『今そっち行って遊んでやるから…なーゆき?』

その言葉と同時、腰のホルダーからナイフを取り出して男の銃を弾く。

「なっ!」

怯んだ隙に腹を思いっ切り蹴飛ばし、男は教卓に激突した。体制を直される前にもう一撃腹に蹴りを入れれば、男は気絶した。

「……………」

近くに落ちてた銃と携帯を拾って耳をつける。

「それで、今ベルフェゴール様はどちらにいらっしゃるのですか」
『ベルな。もう校門につく。つーか何人くらい居んの?』
「…通信機のナンバーが10番なので、少なくとも10人以上かと。リーダーらしき人は人質をとって体育館です」
『ふーん。殺っていい?』
「…お好きにどうぞ。ただし人質含め生徒先生は傷つけないでくださいね」
『忘れなかったらな』

一方的に切られた電話。携帯をパタンと閉じて溜息をついた。

ふと教室を見れば、皆怯えた様子で私を見ていた。…無理もないか。いきなり刃渡り30p越えのナイフ取り出して、銃を持った男倒したのだから。

ナイフを仕舞って教室を出ようとすれば、友達の彼女が私に声をかけた。

「ゆき…どこ、行くの?」
「体育館へ。用事が出来たので」
「わ、私も…!」
「…死にますよ。死にたくなかったら、この教室から出ないで下さい」

いつもは彼女に対して使わない敬語で突き放して教室から出た。私は、あなたたちとは違うから。



廊下に居た男を不意をついて倒し、校門付近でベルと合流した。返り血すらついてない。…それだけ格下か。付け焼き刃の私ですら不意をつけるのだから。

「あれが体育館です」

体育館につくとベルは楽しそうに口元を上げる。楽しんでるなぁ…。体育館に入れば、飛び掛かってくる二人組の男。…殺気が漏れてるし、気配も消せてない。ベルが首をかっ切って殺した。

「よくも…俺の仲間達を…!!」

奥にはナイフ片手に人質を抱えたリーダーらしき人がいる。人質である女子は涙目で震えていた。でもそんなことは気にせずスタスタと進むベルに、リーダーは叫ぶ。

「止まれ!!この女がどうなってもいいのかッ!!!」
「ししし!俺そいつ知らねーし、殺したきゃ殺せば?」

その言葉にまた頭を抱えたくなった。

でも一応私の話しを気にしてくれたのか、その言葉に激昂し、隙が出た瞬間に男のナイフはベルのナイフで弾かれ、

「なっ!」

次の瞬間には人間の主要間接全てにナイフが刺さった。

「う、うぎゃあああああ!!」
「きゃああああ!!!」

拘束がなくなり、女子生徒は逃げ出した。しかしすぐに腰が抜けたのかへたりこんでしまったので、移動させようと近づいたら気絶してしまった。…何も私の顔見て気絶しなくても。

「呆気ねぇー」
「そうですね」

暇そうにナイフを回すベル。私はこの後始末が大変そうだとか考えてた。

するとバンッという音と共に数人の生徒、先生が体育館へやってきた。

「ミオ!」

先頭の男子生徒が女の子に駆け寄る。彼氏か、それとも兄弟か。…身体的な特徴が似てるから、兄弟か。

「しっかりしろ!」
「気絶しているだけですよ」

そう声をかけたら、ギロッと睨まれた。そして立ち上がり、スタスタとベルの元へ歩いていく。…何を、

「おいお前!!」

ベルより頭一つ分背の高い男子生徒は、その言葉と同時にベルの胸倉を掴んだ。

「んなっ!」

「お前の所為でッ!!」
「…おい、庶民が王子に触んなよ」
「ふざけてんじゃねぇ!!!!」
「……二回目ー」

「っ馬鹿!」

漏れだした殺気に走り出し、ベルと男子生徒の間に走り込んだ。男子生徒を突き飛ばし、腰から出したナイフで防ぐも、防ぎ切れず至る所に切り傷が出来た。

「…な、」

男子生徒が目を見張る。

「………………」

いつになく鋭い殺気。先程まで楽しそうに曲がっていた口元も、今は無表情。

「抑えてください、ベル様」

殺気に当てられ、震えそうになる声を絞り出した。

「…ゆき」
「はい」
「アレ」
「御自由にどうぞ」

アレと刺されたのは先程の男。御自由にと言った瞬間、人の形をしていたものが断末魔をあげ…細切れになった。

きゃああああ!!と見に来た野次馬の女子生徒達は悲鳴を上げる。

「…このことは他言無用でお願いします」
「お、お前らは…」
「もし、話してしまったら…貴方も、その子も、両親も…ああなりますよ」

男子生徒にそう言って、ベルの元へ。

「帰ろうぜーゆき。シラけた」
「私はまだ帰れません。この後始末をしなくてはならないので」
「じゃあ夕飯寿司な」
「畏まりました」

頭を下げれば、ベルはヴァリアークオリティーで消えた。…機嫌悪かった。しばらくは好きにさせないと。

「…………」

ため息をついて周りを見れば、遠巻きに私を見ている生徒や先生が目に入る。その瞳は、皆恐怖に染まっていた。

「………っ」

わかっていることのはずなのに…血がダラダラ流れている無数の切り傷よりも、胸が痛んだ。

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