ナイフ | ナノ


VI



それから数日。私は何故かほぼ毎日10代目の修業に付き合った。格下と戦って修業になるのかとも思ったが、赤ん坊曰く、

『お前のカラスは炎をうまく使わねーと倒せないからな、炎コントロールにはちょうど良いんだぞ』

とのこと。
私自身のスキルアップにも繋がるから別に良いが、結局食事の手伝いは一度も出来なかった。

修業に付き合って一つ思ったことは、この沢田綱吉という存在は特別な存在なんだということだ。まあそんなこと言ったら世界越えてる私こそ特別な存在のように思えるが、特筆すべきはそこじゃない。

彼は自らを一般人だと言う。最もだと思った。10年前初めて話した時こそ、10代目なのに一般人?とか思ったが、彼を取り巻く主な環境は一般人そのものだから。

でも、彼は特別だ。

一般人上がりの私が、死に物狂いで手に入れた少しの戦闘力。死に物狂いで、だ。ヴァリアーは本当に殺すのだから。

でも、彼はそれを、私の10年を僅か1時間で習得する。私が同じ修業をしても、絶対にそんな急成長しない。

私と戦って、彼が成長するのを感じた。同時に、自分の限界も見えた。一般人上がりの私では、ここまでだと。でも一般隊員くらいなら倒せるから勘弁してほしい。

この数日で、彼とはとても仲良くなった。10年前、私は彼を殺そうとしたのに。彼は終始自然に接してくる。でも私はあの時のことを後悔したことはない。だってあの時はあれがベストだと思ったから。どれだけ傷ついても己の野望を成し遂げようとしたザンザスに、あの時、私は力になりたいと思った。理不尽だけど、あの職場が嫌いじゃないのは、必要とされてるのがわかるからだろう。

でも、彼が初めてボンゴレ匣を開匣し、I世のマントを羽織った時は思わず見惚れてしまった。

これが大空だと、そう思った。


そして、チョイスが始まった。後から来たらしいスクアーロが桔梗とかいう人に見つかって、共に観覧席で勝負を見守った。

−−これよりチョイスバトルの勝者が決まりました。勝者は、ミルフィオーレファミリーです。

負けた。

コールと同時に駆け出して、入江の治療に向かう。

「白蘭さん!僕はまだ戦える!!」
「駄目だ正一君!動いたらお腹から血が!」
「てめぇ死にてーのか!?」

「邪魔です」

「んだと!?」
「獄寺君!ここは真鶴さんに、」

嵐を押しのけて治療を開始。入江が過去話をしだしたが、はっきり言って聞いてない。怪我人は黙ってろと思ってた。

入江が終わったら他の連中の治療へ。チョイスの再戦とかいってる。ほう、再戦出来るなら再戦したほうが良い。今度はスクアーロ入れると良いよ。

治療を終わり、スクアーロの元に戻ると、白蘭と目が合った。にっこりと微笑まれ、身体中に悪寒が走る。思わずスクアーロの後ろに隠れた。

「お゙ぃ…ゆき、」

スクアーロがそう言うのとほぼ同時、可憐な声が聞こえてくる。

「私は反対です。白蘭、ミルフィオーレのブラックスペルのボスである私にも、決定権の半分はあるはずです」

「ユニ…貴様…!」

黒い服を見に纏った少女が、凛と白蘭を見据えていた。

「初めまして、ボンゴレの皆さん」

邪気のない笑顔でこちらを見るのは、ミルフィオーレ、ブラックスペルのボス…確か名前は、ユニ。

白蘭は否定しているが、入江の話だと劇薬で操り人形になっていたそうだ。

「でもその間…私の魂はずっと遠くへ避難していたので無事でした。白蘭、貴方と同じように私も他の世界へ翔べるようです」

「…な、」

その言葉に思わず声が漏れた。他の人達も驚いているが私と同じ驚きではないはずだ。…他の世界へ飛べる?白蘭と同じ?

世界を越えた、私も…同じ?

グルグルと頭が回る。知恵熱か、頭痛までしてきた。

そんなことをしてる間も話は進み、ユニがミルフィオーレが脱退した。

「沢田綱吉さん…お願いがあります」
「え!お…お願い…!?」
「私を守ってくださいっ!!」

アルコバレーノの魂とか、73とか、ユニ取り戻そうと必死な白蘭とか、いろいろ話は合ったが、あまり頭に入ってこない。

『白蘭、貴方と同じように私も他の世界へ翔べるようです』

その言葉だけが頭を廻ってる。

戻れるかもしれない。あの平和で優しい世界に。10年越しだけど。

「白蘭様、ご安心下さい。ユニ様は我々がすぐにお連れします」

それと同時に空中から攻撃を仕掛けてくる6弔花。完璧に反応が遅れたが、スクアーロが引っ張ってくれた。

「ゔお゙ぉいッ!てめぇの相手はオレだあ!暴れたくてウズウズしてたんだあ!!」
「邪魔だよ」
「んだてめぇは!!つつくな!」

「スクアーロに雲雀さん!それに真鶴さん!?」

…そばにいるから人数に入っても良いが、このメンツ…逆に巻き込まれる気しかしない。

すっかり臨戦態勢で好戦的な笑みを浮かべる二人と6弔花。それを止めたのは他でもない白蘭だ。ユニに交渉するが、全てバッサリ切り捨てられる。

でも流石にチョイス無効とか凄いな。まあヴァリアーも10年前に似たようなことしたから慣れてるけど。

10代目達はユニを守ると宣言し、隣のスクアーロはニヤリと笑う。

「そうこなくちゃなあ!!ゆき…巻き込まれない様に注意しろよぉ!」
「お気遣い感謝します」

「スクアーロ!真鶴さん!」

二本のナイフに炎を燈して、クロを開匣。

「時間を稼ぐので撤退を」

10代目とユニにそう言って、スクアーロの後に続いた。

攻撃はせずにナイフで弾くだけ。敵の炎と晴の活性でクロの増殖を促す。今回は足止め、時間稼ぎができれば良い。…大丈夫、得意分野だ。

「壁を張るので撤退を!」

ある程度増殖してそう叫べば、雲雀もハリネズミを出した。

「君の、頼りなさそう」
「ごもっともですね」

早速切り傷を作っていたので治す。最前線で戦っていたスクアーロを援護すれば、俵担ぎされアーロに乗り撤退。

「よぉし!だせえ!!」

「やったんだね!獄寺君!」
「俺じゃねぇっす、真鶴のカラスと雲雀のバリネズミのトゲが増殖して足止めしてるんす」

「! スクアーロ様、来ます!」
「チィ!速えなぁ!!」

増殖したカラスの壁が破られたと思ったら、すぐに見えた白蘭。

「お前達は先に行け、今度は俺が時間を稼ぐ」
「でもディーノさんだけとり残されちゃうんじゃ…」

誰が残るかで揉めたが、有幻覚で現れた霧の守護者が引き受けた。

「いいですか?沢田綱吉。絶対に大空のアルコバレーノ、ユニを白蘭に渡してはいけない」

それと同時に私達は炎をぶつけ、並盛へ跳んだ。

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