ナイフ | ナノ


II



「…今日はフィレ肉ですよ」

ザンザスの肉周期的に。

「「「も、申し訳ありません!ゆき様!」」」

服の端々が焦げてる隊員達三人を見てため息をつく。ただでさえ食料不足なのにザンザス用の肉が3つも消えた。最後はザンザスの手違いみたいだが。つーかザンザスに出す肉はまず私に話を通せと…九割の確率で当てるから。

「でも、よかったですね。その程度で済んで」

機嫌悪いと半殺しだぞ。まあ今人手不足だし、そこら辺考えてくれたのか。

「では、あとは私が引き受けるので各自持ち場に戻ってください」
「「「はっ!」」」

返事だけはいいな…ったく、余計な仕事増やしやがって…これでザンザスに殺されたらお前ら道連れにしてやるからな。

今はミルフィオーレとの総力戦。古城を占拠しての防衛戦だ。敵に殺されるならまだしも、味方に殺されるとか…嫌だなぁ。でもザンザスならあっという間に灰にしてくれそうだ。

「…それならそれの方が潔いか」

そんな独り言を言っていると通信が入る。ルッスーリアからだ。持ち場を離れすぎたか。

「申し訳ありません、ルッスーリア様。すぐに戻りますので、」
『あら違うわよーゆきちゃんにはベルちゃんの援護に行ってほしいの。南に6弔花が来たんですって』

なん、だと?そんな死亡率MAXの所行きたくない。

「…お言葉ですがルッスーリア様、それは私が行くよりルッスーリア様が向かわれて、私が救護の方に…」
『それがねぇ、こっちも今交戦中なのよ。見張りがやられてね、敵がわんさかいるわ』

敵がわんさか?…いやいやいや、それでも6弔花よりマシでしょう。

「…ですが、

『いーから来いよゆき!王子怪我してるし、待たせるとか何様?』

「…………」
『だそうよ』
「…わかりました。今から向かいます」
『気をつけるのよー』
「はい」

…くそ。どっちも生存率低い…でも行かなくてベルフェゴールに殺されるのが一番嫌かな。

隊服のポケットから匣を取り出し、晴の指輪に炎を燈す。開匣すれば黄色い炎を宿した大きな鷲が現れた。

さてイースちゃん、これから戦場だ。まあ此処も戦場だけど。

近くの窓を開け放ち、あちこちから火の手の上がる闇夜に飛び立った。





「…ベルフェゴール様?」

強い指輪の反応が大きく集まる場所に飛んで行けば、象と椅子に座ったベルフェゴールがいた。…象?

「はあ?ベルなんかと一緒にすんなよ」
「…はい?」
「それはこっちの台詞だってジル。おいワンコ!」

下から聞こえた声と同時に投げられたナイフをよければ、同じ顔がもう一つ。

「…ベルフェゴール様、ですか?」

隣にはカエルの被り物を被ったフランも居る。

「ゆきさーん、その人、堕王子の殺し損ねた兄だそうですよー」
「うっせーカエル!」
「痛いですー」

…事情はよくわからないが、あの椅子に座った奴はベルフェゴールの兄らしい。そういえば隊服じゃないし、髪型も似てるが違う。

そしてイースを仕舞い地に下りれば、そのまま戦闘開始。フラン以外が開匣し、私も臨戦態勢に入る。



「…がはっ!」

それは呆気なく…死んだ。




「……ぷは」

まあ、もちろん幻術なんだけど。

一瞬のうちに地に埋められ、フランが幻術をかけた。相変わらず見事だが、口に土が入った。そして古城に向かったベルフェゴールの兄を追う。…私が来た意味は一体。あ、でもあの攻撃に巻き込まれてたら死んでたかも。

ワラワラと出て来るミルフィオーレの一般兵をベルフェゴールが相手している内に二人の怪我を治す…が、こいつら、私を呼ぶほど怪我してないし。小さいかすり傷と切り傷だけだ。…とりあえず上で戦ってる血まみれのザンザスを治す分の炎はとっておこう。

流石に敵の数が多いので、私も匣を取り出した。晴の活性で少ない雲の炎の増殖を促し、指輪に炎を燈す。開匣すれば、雲の炎を纏ったカラスが飛び出した。

「クロ、突撃」

肩にちょこんと乗る司令塔にそう指示すれば、増殖で増えたカラス達が雑兵達に特効する。パチンと指を鳴らせば一斉に爆発した。

「あんま効いてませんねー」

が、攻撃力はあまりない。
元々私の主な波動は晴だ。少ししか流れていない雲の波動を晴の活性で無理矢理実践で使える様にしている。純度はどうやったって高くならない。10代目の雲の守護者ならもっとこの子を上手く使えるんだろう。

「今更だろ。おいカエル手伝え」
「じゃあこのカエル取っていいですかー?」
「ぜってー駄目!」

…喧嘩すんなよ。

爆発をもう一度起こして空を見れば、ちょうどベルフェゴールの兄をザンザスがかっ消すところだった。



−−いいや、ただの小休止だよ。イタリアの主力戦も、日本のメローネ基地もすんごい楽しかった。

ザンザスや幹部の治療にあたっていたら聞こえてきた耳障りな声。

−−ボンゴレの誇る最強部隊の本気が見れちゃったりして、前哨戦としては相当有意義だったよね。

一番重態のレビィの治療に炎を絞り出す。正直、敵のボスの話なんて聞いてる暇がない。わかったことは10日後に真の6弔花なる者と戦うらしいということだけ。10日間の休息…相手は随分余裕らしい。

「…終了です。変わりないですか?」
「あぁ」
「それは…よかった…です、」

レビィの治療を完璧にこなしたて炎が切れた。そういえば今日は珍しく戦ったし、使用した炎の量がハンパなかった。

「あれゆきさん、相変わらずダウン早いですねー」
「申し訳…あ、りませ、」
「てめぇらがこき使うからだろうがぁ…」
「えーこき使ってるのはミーじゃなくて堕王子です」
「はあ?俺じゃねーし。カスザメだろ」
「ゔおおおぉい!なんで俺だあああぁ!ッガ!!」
「…るせ」
「てめぇ!」

気を失う直前、ホログラムの白蘭と目があった気がした。 ただ一つだけ思ったの事は、お前ら幹部は全員私を酷使し過ぎである。


top


×
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -